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2020年6月6日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

(AP/AFLO)

 クリミア併合というロシアの蛮行はもう〝時効〟になったのか。  

 トランプ米大統領がアメリカで今年開かれるG7サミット(主要国首脳会議)にロシアを招請したい意向を明らかにした。大統領の持論であり、いまさら驚くことはないが、びっくりしたのは日本政府の反応だ。茂木外相は、トランプ氏の意向を支持、ロシア復帰を歓迎した。

 ロシアは2014年、ウクライナのクリミア半島を強引に自国に編入したことを非難され、G8から追放された。北方領土を不法に占拠されている日本も、ウクライナと同じ〝被害者〟だ。ウクライナ問題が解決を見ていないにもかかわらず、何の大義あってロシア招請に賛成するのか。

 トランプ、プーチン両氏にいい顔をするーー。右顧左眄(うこさべん)といれてもやむを得まい。

トランプ「G7は時代遅れ」

 トランプ大統領は5月31日、ことしの議長として、今月中に開催する予定だったG7首脳会議を9月の国連総会前後か、自ら再選を目指す11月の大統領選の後に延期し、ロシアのほか、インド、豪州、韓国を招請する考えを示した。 大統領は「G7は時代遅れになった。世界で現在起きていることを正確に反映しているとは思えない」と招請の理由を説明した。

 ホワイトハウス高官はこれに関して、大統領は、今年のサミットで、中国問題を大きな議題とする意向を持っていると明らかにした。新型コロナウィルスへの対応や香港問題で対立している中国への圧力で各国の同調を促し、包囲網を形成したい考えと伝えられている。

 韓国の文在寅大統領は6月1日のトランプ大統領との電話協議で、自らの出席について「喜んで応じる。G7だけで世界的な問題への解決を見出すことには限界がある。4カ国の招請は適切だ」と、いささかはしゃぎすぎとも思える表現で謝意を伝えた。

 ロシアなど各国の招請が、今年だけのゲストとするアウトリーチなのか、恒久的にメンバーを拡大しようという構想なのか、トランプ大統領の意図は明らかではないが、カナダはすでに反対を表明、英国、フランスも同様とみられる。恒久的な参加国拡大には、各国の同意が必要であるため、実現は簡単ではない。 

外相「対話と関与が必要」

 トランプ大統領は、2017年の就任以来、ロシア再招請に意欲をみせ、フランス・ピアリッツで開かれた昨年のサミットのでもこの問題を提起したが、各国首脳から時期尚早と一蹴された。昨年の議長、マクロン・フランス首相は「クリミア問題が解決されれば復帰が実現する」と述べ、クリミアの原状回復がなされない限り、問題にならないとの姿勢を示した。

 本来ならロシア参加に真っ先に反対を唱えるべき日本が、トランプ大統領の構想に賛意を示した理由を茂木外相が説明する。「国際的な課題の対応に当たって、ロシアの建設的役割を引き出すため、対話と関与が必要だということは、わが国の基本的認識だ」(6月2日の記者会見)ーー。日本から領土を強奪した国に「建設的役割」を期待するというのだから、お人よしにもほどがあるというべきだろう。  

 救いは、外相がロシアの参加は恒久的な復帰ではなく、あくまで今年限りのゲスト、という前提にたっていることだ。茂木氏は、「G7では、アウトリーチとしてメンバー外の国や国際機関が招待される。昨年は、アフリカ諸国、チリ、インド、豪州等が招かれた」と説明した。しかし、たとえ一年だけのゲストであったとしても、追放した国を招請するというからには、それなりの納得のいく理由が必要だろう。ロシアが反省、謝罪してクリミアの原状を回復させたというならともかく、そういう状況に至っていないなかで招請することは、その不当な行動を容認することになる。

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