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2020年6月6日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

北方領土とクリミア、根は同じ

 ロシアがG8を追放されたクリミア編入は、〝力による現状変更〟であり、北方領土問題と軌を一にしている。

  クリミア編入は、2014年春、ウクライナで親ロシア政権が崩壊、欧米寄りの政権が登場したことが事の発端だった。クリミアの親ロシア一部住民が抗議、情勢が混乱したことに乗じてロシア軍が侵攻。クリミアに親ロシア政権が樹立され、ロシアへの編入が決定された。その賛否を問う住民投票は不明朗な形で行われたが、ロシアはウクライナや欧米各国の反発を押し切って編入を宣言した。

 クリミア併合直後、ウクライナ東部でも親露派が独立やロシアへの併合を求めて中核施設を占拠、ウクライナ政府軍と激しい戦闘に発展した。クリミアはロシアに併合されたままで、東部紛争に関して、違法な外国武装集団の撤退などが盛り込まれたミンスク合意(2014年9月と2015年2月、ウクライナ、ロシアなどが調印)は履行されず、混迷が続いている。

 国連、欧州などは、ウクライナなどの主権、領土一体性を保障したブタペスト宣言(署名、米英露)違反として非難。関与したロシア企業、個人の資産凍結取引停止など厳しい制裁を科した。

 この年6月のG8サミットはロシアのソチで開かれる予定だったが、各国はこれをボイコットし、ブリュッセルでロシア抜きの会合を開いた。この場で、ロシアのG8追放が決まり、現在まで「G7」になっている。

 わが国の北方領土強奪についてはいまさら繰り返す必要はなかろう。ロシアの前身、旧ソ連は、先の大戦の末期、日本との中立条約を破棄して旧満州に攻め込んだ。8月15日の終戦後、かつて一度も外国領になったことのない北方4島に侵攻、以来70年以上、不法占拠をつづけている。ソ連からロシアになっても、その行動パターンにはまったく変化がない

ロシアの不法行為の容認だ

 しかし、ウクライナに各国が制裁を科した時、日本の取った措置はビザ自由化交渉、投資、宇宙開発に関する交渉の停止などまったくといっていいほど〝実害〟を与えない内容にとどまった。いわば各国への〝おつきあい〟だった。強い制裁は、外相が言う「ロシアの建設的役割を引き出すために対話と関与を引き出す」という「基本的認識」を損なうという配慮だったのか。

 今回、ロシアの復帰を歓迎したのも、トランプ大統領の顔を立て、プーチン大統領と安倍首相の個人的な関係を維持でき、その結果、領土返還交渉によい影響を与えると考えてのことだろう。

 首相は2018年暮れ以来、歯舞、色丹両島の日本への引き渡しを明記した1956年の旧ソ連との共同宣言(日ソ共同宣言)を交渉の基礎とすること、つまり従来の4島返還から2島返還に方針転換してロシア側と交渉を進めている。しかし、先方の姿勢は固く、返還の見通しは全く立っていない。この経過は筆者が繰り返し本サイトで書いてきたとおりだ。

 盗人のような行為をしてはばからない国のG7参加など認めたら、その行為を容認することになり、違法であっても居座りさえすれば日本はあきらめるという誤ったメッセージを内外に与えることになろう。尖閣、竹島問題にも極めて悪い影響を与え、ロシア参加に反対する欧州各国からの嘲笑も覚悟しなければなるまい。

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