2022年12月5日(月)

Washington Files

2020年10月2日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

追跡不可能な疑わしい海外取引

 第2は、トランプ氏が大統領就任後、フィリピン、トルコなど諸外国とのビジネス取引に関係、巨額の利益を得ていたことだ。

 周知のとおり、米国では「倫理法」の規定により、大統領以下、閣僚、政府高官が私的な商取引に従事することは禁じられている。

 トランプ氏の場合、不動産取引などを主体とした「トランプ・オーガニゼーション社」(本社ニューヨーク)を立ち上げ、大統領就任後は、公私混同の批判をかわすため、社長の座を長男に移譲したものの、経営者としての地位はそのまま保持してきた。

 その結果、就任後も実務は長男に委ねつつも、大統領の立場をフルに生かし、海外でのビジネスを展開、その際に、数千万ドルに達する所得税を当該国に支払っていることも明らかになっている。

 非営利の監視団体「Open Secrets」の調査によると、大統領は2016年から2019年にかけて、インドで410万ドル、トルコから7百万ドル、フィリピンから5百万ドルの収益を得たほか「ほかにも追跡不可能な疑わしい海外取引が無数に行われてきたとみられる」という。

 米下院倫理委員会、歳入委員会など関係委員会は、ニューヨーク・タイムズの調査報道を踏まえ、今後、連邦政府当局者の証人喚問、外国企業からの事情聴取に乗り出す構えを見せている。

 第3の関心事は、今日のトランプ氏の「個人資産」規模だ。

 その実態については謎が多く、正確の数字は明らかになっていないが、経済誌「Forbes」などの試算によると、「推定25億ドル前後」とされる。

 しかし、その中にはマイアミの巨大ゴルフ施設Doral Resort, スコットランドの名門ゴルフ場Turnberryなど、多額の借金で買収した不動産物件多数が含まれており、実際に手元に残るキャッシュがどれだけかははっきりしていない。

 しかも、トランプ氏が2022年までに返済を迫られる4億2100万ドルもの借金を、今後2年間でスムーズに返済できるかどうかが、トランプ氏の「純個人資産」規模を知るひとつの手掛かりになることだけは確かだ。

 このようにトランプ氏のビジネス取引は、多くの謎と厚い秘密のベールに包まれてきたが、トランプ政権下の司法、財務当局は事実上、これを放置してきたと言っても過言ではない。

 しかし、もし、11月3日に迫った大統領選挙の結果、バイデン候補が勝利した場合、局面は一変することになる。

 すでに政界筋では、バイデン政権誕生後、あらゆる“トランプ疑惑”をそうざらいする特別タスクフォースがホワイトハウス内に設置され、その統括責任者として敏腕検察官上がりのカマラ・ハリス女史が副大統領の立場で直接指揮する計画も浮上している。その結果、トランプ氏が刑事告発される可能性も現実味を帯びてくる。

 いずれにしても、大統領選挙結果次第では、虚構だらけの「トランプ王国」が早晩、ついに“砂上の楼閣”として瓦解してしまうことになりかねない。

 これまでの選挙戦でバイデン候補にリードを許してきたトランプ氏だが、劣勢挽回の好機と期待をかけた去る29日の第1回討論会でも、資質面、性格面での弱点をさらけだし、かえって評判を落とす結果となった。

 脱税、巨額過少申告問題の批判も、草の根レベルで今後広がるにつれ更なる支持率低下につながりかねず、大統領の苦悩は一層深まるばかりだ。

  
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