WEDGE REPORT

2020年11月1日

»著者プロフィール
著者
閉じる

秋元諭宏 (あきもと・さとひろ)

笹川平和財団米国会長兼理事長

慶應義塾大学法律学部法律学科卒業。ハーバード大学大学院東アジア学修士・社会学博士。米国三菱商事上級副社長兼ワシントン事務所長、三菱商事理事・グローバル渉外部長など歴任。2019年1月に笹川平和財団米国の理事長に就任し、同年10月から現職。ジャパンタイムズ、岡崎研究所に定期的に寄稿。

 中でも、世界の経済成長の原動力であるアジア太平洋地域への関与を低減させることは、中国が地域の覇権国として君臨し、米国の戦略に決定的に重要な地域における国益を排除することに繋がりかねない。こうした点をワシントンの政治・政策コミュニティだけでなく、米国各地の有権者に継続的に説明し、米国が孤立主義の誘惑に負けないようにする。さらに、日米との同盟関係が米国を利する安全保障の枠組みであり、両国の国益に資する制度的資産であることも併せて伝えていく。

 第二は、米国がリベラルな国際秩序の重要性を訴え続けるよう働きかけることだ。米国が国際社会やアジア太平洋地域に関与するにあたり、自由で開かれた国際秩序が重要である。経済力と軍事力を背景としたハードパワーに頼り、自国の国益を追求するだけならば、米国も中国と同様、強引な「力の国」になるだけだ。ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が唱えたように、米国の国際社会における存在意義は、一人一人の自由と幸福を求める権利を擁護する、全人類に共通の価値観である「ソフトパワー」にある。

 冷戦時代を通じて米国が国内外で困難や矛盾に直面しながらも、国際社会の基本的な支持を得て世界の指導的役割を果たしてきたのも、価値外交が背景にあったからに他ならない。民主主義、自由、市場経済、法治、透明性などの価値は、米国の建国の理念に深く刻まれており、米国が「丘の上の輝く町」であるという神話にも合致し、本来的には米国人の琴線に響くものだ。

 第三は、日米間の人的交流の多極化と重層化を促進するよう働きかけることだ。日米はアジア太平洋地域を中心とした安全保障や経済を中心とした国益、リベラルな国際秩序の基盤となる価値など、共通の国益を有している。こうした日米関係を下支えするのは、両国間に築かれた、信頼と尊敬に満ちた人的関係である。

 しかし、日米間の大学生・大学院生の留学はピーク時の半数近い低位に定着し、日本政府・企業のプロフェッショナルスクール派遣は減少、グローバル化に伴い政府・企業が米国以外の多方面へ展開するなど、日米間の人的ネットワークの交流は日米関係の重要性に鑑みて十分とは言えない。次世代、次々世代の日米間の人的交流の厚みを増すことは急務だ。

 なお、米国では約500万人の中国系を筆頭に、インド系、ベトナム系、韓国系など、アジア系米国人の人口が急増しており、約150万人の日系人は政治的発言力が限定されている(下図)。今年4月には日米関係の深化に日系人の立場から尽くし日系人のリーダーの一人であったアイリーン・ヒラノ氏(故ダニエル・イノウエ上院議員夫人)が死去した。米国ではエスニックも政治に影響力があるので、日系人との関係構築も大切だ。

(出所)ピュー・リサ—チ・センター資料よりウェッジ作成 写真を拡大

関連記事

新着記事

»もっと見る