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2020年11月1日

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秋元諭宏 (あきもと・さとひろ)

笹川平和財団米国会長兼理事長

慶應義塾大学法律学部法律学科卒業。ハーバード大学大学院東アジア学修士・社会学博士。米国三菱商事上級副社長兼ワシントン事務所長、三菱商事理事・グローバル渉外部長など歴任。2019年1月に笹川平和財団米国の理事長に就任し、同年10月から現職。ジャパンタイムズ、岡崎研究所に定期的に寄稿。

 トランプ大統領とバイデン候補は、政策的には両極に位置する水と油だ。政治、経済、社会、文化の全ての面で対立し、共通点は全くと言ってなさそうに見える。

4年前にニューヨークで開催された「Japan Day」のようす。多くの日米の若者が積極的に相互の文化を理解し、交流することで、関係もより深まっていく (PACIFIC PRESS/GETTYIMAGES)

 ところが両候補には共通点がある。共に「国内問題最優先」の姿勢を示している点だ。米国内の保守とリベラルの決定的な対立、経済的格差の拡大、トランプ氏による国民の分断に加えて、新型コロナウイルスの感染拡大、経済活動の停止と雇用の喪失、黒人に対する人種差別を巡る混乱などが理由だ。さらには、トランプ氏の新型コロナ感染、大統領選の結果を巡る混乱、あるいは結果さえ通常の大統領選のようには明らかにならず、混迷が深まる可能性さえある。

 米国が今世紀前半に直面する、最大の課題は中国だ。ブッシュ政権ではゼーリック元国務副長官が中国に対して「責任あるステークホルダー論」を唱えた。オバマ政権ではスタインバーグ元国務副長官が中国に対して「戦略的再保証論」を唱えた。両者に共通するのは、中国が外交、安全保障、経済などで国際的に受け入れられた規範に基づいて行動していないという、中国の基本的な姿勢に対する疑念だ。

 しかし、中国には米国の経済的パートナーという面もあり、安全保障面では軍事力増強や領土拡張で緊張が高まるが、冷戦期の旧ソ連のように全面的な対決姿勢にはならない。このため米国は中国に対する国家として一貫した大戦略を構築するに至っていない。バイデン陣営の外交顧問たちも対中政策について侃々諤々の議論を行っている最中と伝え聞く。

両国の絆を支えるのは
企業人・若者の日米交流

 このような状況の下、日本はどのような役割を果たすべきか。そもそも日本にとり中国は永久に離れることができない隣国である。同時に、日本にとり中国は最大の脅威であり、機会でもある。中国は14億人規模の巨大な市場であり、文化的親和性があり、生産性を有する労働者もいる。加えて、気候変動、環境、海洋資源など本来は共通の課題がある。また、北朝鮮問題など外交的な連携が望ましい課題もある。

 強大な中国との関係を安定させ、アジア太平洋地域の平和と国際秩序を維持し、日本の国益を増進させるためには、日本と歩調を合わせた形で米国をいかにこの地域に関与させていくかが、重要な政策課題だ。そのためには、次の三つの視点が重要になる。

 第一は、米国の国際関与、特にアジア太平洋への関与を継続するよう働きかけることだ。歴史の必然として、進行するグローバル化に背を向けることは、米国が国際社会の規範や制度の構築に参画しないことを意味し、米国の国際社会における影響力や国益を失うことに直結する。

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