Foreign Affairs の7-8月号に、ペンタゴンの元政策担当国防次官のミシェル・フロノイが、元部下であったと思われるジャニー・デビッドソンと連名で、米軍の前方展開の必要性を軽視したラムズフェルドの戦略に比べて、その必要性を認めたオバマの戦略は正しい、との論文を寄稿しています。フロノイは、オバマ政権発足前から、現国務省アジア太平洋国務次官補のキャンベルとともに、CNAS(Center for a New American Security)を創設してセンター長となった、民主党系軍事戦略家であり、次のように述べています。
すなわち、ラムズフェルドの2004年の世界戦略では、海外基地を閉鎖して米軍を本土に戻すのがその中心的理念であった。それと対照的にオバマの戦略は前方展開の米軍をより効率的・効果的にすることにある。
米軍の前方展開は、米国の力を最も発揮させるとともに、同盟国に、防衛負担の増大をエンカレッジするものである。
前方展開の米軍は、同盟国に対して、その地域を見捨てないという米国のコミットメントを保証するものであり、パートナーと共同訓練、共同作戦をすることによって、バードン・シェアリングを実行するものである。
海外基地を閉鎖すれば、数十億ドルの節約になるというが、それは誤りであり、軍隊はどこに置いても経費のかかるものであり、独、日、韓などの政府は経費を分担してくれている。
オバマ大統領は、アジア復帰を唱え、それ以来豪州には海兵隊を派遣し、シンガポール、フィリピン、タイ、ベトナムなどに沿岸警備の艦隊派遣を計画している。
オバマの戦略は、まさに前方展開の必要性を認めている。米国の長期的利益のためには、戦略的前方展開が必要であり、大統領は、引き揚げ論に対抗して、米国の世界的指導力を維持しなければならない、と結んでいます。
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ラムズフェルド元国防長官は、まさに前方展開引き揚げ論者でした。ラムズフェルドの論理は、軍事技術が発達して機動力が高まった現代においては、兵力を米本土に集中して、世界中に必要に応じて派遣すべきだという、素人的発想であり、イラク戦争においても、占領行政に必要な兵力を求めるシンセキ陸軍参謀長の意見を退けて、少数の近代兵力で目的を達成しようとして、イラク戦泥沼化の端緒を作っています。