米海兵隊が今年8月から沖縄県の普天間飛行場に配備を予定している垂直離着陸輸送機MV-22、いわゆる「オスプレイ」をめぐり、日本では一大騒動となっているようだ。今月、アジア外遊の際に東京を訪れたクリントン国務長官が野田佳彦総理大臣や玄葉光一郎外務大臣と会談したときも、この問題が話題として言及された。早ければ今月末にも森本敏防衛大臣が訪米して、本件についてパネッタ国防長官と協議するほか、オスプレイに試乗する可能性もあるという。
騒動の原因は?
そもそも、オスプレイ配備は何がそんなに大騒ぎになっているのだろうか。最大の原因はオスプレイの「安全性」についての疑問であるとされる。民主党の中で安全保障にもっとも理解がある議員としてアメリカでもよく知られている前原誠司政調会長(元外務大臣)が「民主党の総意だ」としてルース駐日米大使にオスプレイ配備延期を申し入れてしまうほどだ。
オスプレイは開発中に大きな事故が続き、その度に話題を集めてきた。飛行実験中の事故で死亡する乗員が後をたたないので、「未亡人製造機(widow maker)」というありがたくないニックネームまで頂戴したほどだ。2007年に実戦配備されてからも、すでに数度、事故を起こしている。2012年に入ってからは、4月にモロッコ沖で訓練中だったオスプレイが墜落し、搭乗員4名のうち、2名が死亡、2名が重傷を負った。6月にはフロリダ州で訓練飛行中だったオスプレイが墜落、搭乗員5名が負傷した。さらに今月9日には、負傷者は出なかったものの、ノースカロライナ州で海兵隊ニューリバー基地から離陸したオスプレイが同州のウィルミントン国際空港に緊急着陸した。
これだけ事故が多い航空機を人口が密集している沖縄県の普天間飛行場や、普天間に配備する前に試験飛行が行われる予定の山口県の岩国飛行場に配備することへの反対の声が、今年に入ってから事故が相次いだことから高まってきたのだ。特に、離着陸時の事故発生の多さが、懸念を呼んでいるようだ。
ただし、2011年6月に国防総省がオスプレイの沖縄配備を発表した時点で、沖縄県はすでに「普天間基地の固定化につながる」として反対の姿勢を打ち出していた。加えて今年に入って飛行事故が2度、緊急着陸が1度という状態が生まれていることから、試験飛行が行われる岩国飛行場を抱える山口県でも反対の声が高まってきた、というのが実際の流れのようだ。もともと、普天間飛行場移設が遠のく原因になりかねない、という理由で配備に反対していたところ、追い討ちをかけるように安全性についての疑問が再浮上した--というのが実情ではないだろうか。
オスプレイってどんな飛行機?
問題のオスプレイだが、そもそも、どのような飛行機なのか。そして、オスプレイは、日本のメディアで喧伝されるほど危険なものなのか。