2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年8月8日

 中国は、南シナ海において、ベトナム空軍のパトロールへの対応として、「“戦闘準備の出来たパトロール”(Combat-ready-Patrol)を開始する」との声明を出した。地域紛争の起こるリスクは、中国が自分たちの軍事力にどの程度自信を持っているか、という点に直結している。

 米国の問題は、アジア太平洋を重視するという発言にかかわらず、行動が伴っていないことであり、地域紛争発生という有事の際の、軍事戦略が十分検討されていない点である。有事の際に、もし米国がタイムリーに、一貫性をもって対応できないなら、中国は米国が紛争海域に入ることを拒否する戦略をとるだろう、と述べています。

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 このオースリンの論説は、最近、中国が南シナ海においてベトナムの動きに対抗するため、「戦闘準備の出来たパトロール」を開始するとの声明を出したことを背景に書かれています。

 朝鮮戦争、中印紛争、中ソ紛争、中越戦争など第二次大戦後、中国が関与してきた戦争や紛争は、基本的に陸軍を中心とするものであり、海軍、空軍が主役を演じたものではありません。したがって、海洋進出に伴う地域紛争ということになれば、実際に、中国海軍がどこまで近代化し、どれほど質的に高い戦闘能力を有しているのか、多くの点がまだ分かっていません。

 オースリンは、中国の海洋進出について、「張子の龍」という見方は過小評価にすぎる、として、アジアの周辺諸国の軍事能力と比較すれば、中国が地域の覇権を握ることはさほど困難なことではない、と分析しています。

 東シナ海の状況は、南シナ海のそれとは種々の面で異なっているとはいえ、中国の海洋権益の拡張主義に関係国が如何に対峙するか、という点では大きな共通点を有しています。その点では、南シナ海の状況は日本にとって決して他人事ではなく、綿密に観察・分析し、東シナ海における不測の事態への対応策(contingency plan)の策定のための参考とすべきものです。

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