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2020年12月1日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 コロナ禍の終息が見えない中で、売上がコロナ禍の前に戻らず、厳しい経営状態が続いている中小企業への資金融資を行っているアイオー信用金庫(群馬県伊勢崎市、長谷川淳一理事長)と、大東京信用組合(東京都港区、内田通郎理事長)に、地域を支える金融機関の現状と年末資金手当てを含めた今後の対応について聞いた。

(Nuthawut Somsuk/gettyimages)

Q 今年春以降にコロナ禍に見舞われてからの新規融資の伸びはどうか。年末に向けての金融機関としての課題は何か。

長谷川アイオー信金理事長 4月から6月までは大きく伸びた。9月はいったん減少したが、その後は順調に伸びている。また、今年度に入って9月までに今までに取引のなかった122社からの新規融資の申し込みがあり、約12億円融資を実行した。それだけ新規需要が多くあったということで、その需要に対応したことは、コロナ禍中小企業の資金繰り安定化に寄与できた。

 しかしこれら融資の大半は、リスクの要らない無担保、無保証の融資を行ってきたが、年末の資金需要期に向けて資金が枯渇してくる。今後は次の段階として自前(プロパー)融資をもって企業を存続させていかなければならない。つまり、どこまでリスクテイクするか、どのよう企業を支援していくかが重要な課題になってくる。

Q 取引先企業の現状はどうか。

長谷川理事長 売上がコロナ禍前の水準までに回復しているという状況にはない。足元は、「GO TO」で観光や飲食業が少し盛り返してきた他、製造も売り上げは若干回復し、手元資金はコロナ借入資金もあり、多少の余裕が見られる。ただ、未だにコロナ禍は広がっており、何時まで続くか分からないなかで、特に融資の返済をリスケ(繰り延べ)した取引先が、ソフトランディングできればよいが、事業から撤退せざるを得ないような事態になることが懸念される。

Q その場合は信用金庫としても融資先の貸し倒れに備えた引当金を積み増すなど信用コストを払うことになるのか。

長谷川理事長 金利の低下により信用金庫の貸出金利息収入は減ってきている。これを有価証券などによる余資運用で補い、加えて徹底した経費削減を行ってきたが、この数年は企業倒産などによる信用コストが増大して収益を大きく圧迫してきている。この信用コストをいかに減らすかが重要になる。取引先企業約3200社の36%に相当する1166社が無担保のいわゆるコロナ資金を融資したが、この企業が回復に向かえるか、あるいは新たな課題に対応できるか、現在、アンケートなどにより経営情報を取り始めているところだ。

Q 先行き事業展開が見込めない取引先に対しては、信用金庫から事業の撤退を勧めたりしないか。

長谷川理事長 2017年の第3四半期から廃業する企業が増える傾向にあるが、できることならば事業を継続してほしいので、「新現役マッチング交流会」や「アイオービジネススクール」等事業支援活動を行っている。そういう意味では早々廃業する企業が増える段階ではないと思う。つまり、私の方から取引先に対して撤退を求めることはない。ただ、M&A(企業の買収・合併)等あらゆる手段を講じても環境の変化についていけなかったり、後継者がいなかったりやむを得ず結果として廃業をする企業もあり得る。

Q 独占禁止法の寡占禁止規定を例外的に適用除外にして地方銀行や信用金庫、信用組合などの合併を促す「合併特例法」が11月27日から施行されるが、周辺の中小金融機関が合併することについてどう思うか。

長谷川理事長 いまのところ、群馬県内ではそうした動きはない。各金融機関はまだ体力はあるので合併の必要性はなく、統廃合すればかえってその収益を圧迫することになるのではないか。群馬県には信金が統合されて現在7つの信金がある。アイオー信金も合併して誕生したが、それぞれの信金には社風の違いもあり、合併したからといって効率化が進むとは言えない。

Q コロナ禍によりリモート営業はどの程度進んでいるか。

長谷川理事長 外回りの営業をする渉外担当は59人いるが、全員にタブレット端末を持たせて、その場で顧客情報の照会を取り、顧客に合った商品提案をしている。窓口にこの地域では初めてとなるタブレットによるタッチ伝票を導入した。画面上で名前を書いてもらえば、印鑑なしで取引ができる。この仕組みは来年3月頃からさらに進化したシステムが全国の信用金庫に導入が可能になると聞いている。ローン手続きもWeb化が進んでいる。

住宅ローンを借りるときは、相当多い書類に署名捺印をしなければならなかったが、そういう事務作業はこれからなくなる。また、現在通帳による取引は残ってはいるが、スマートフォンで入出金の確認ができる「通帳レス」の手続きを積極的に進めている。これは、顧客の利便性が向上するほか口座維持管理コストの削減につながる。

具体的には、キャッシュカードだけで入出金ができるようにしたい。通帳1通を作るだけで260円かかり、維持するだけで年間1000円から1500円のコストが掛かるので、「通帳レス」にして少しでもコストを減らしたい。

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