大事なのは一緒になって課題解決に取組むこと
Q コロナ禍での取引の現状は。
内田大東京信組理事長 4~6月までの融資取組件数はこれまでにない件数になり店舗は多忙を極めたが、8月ごろに落ち着いてきている。10月末までのコロナウイルス融資取組実績は口座数で5556件、実行額累計金額は810億円。
6月末から7月上旬にかけて事前に抽出した融資先(877社)を対象にヒアリング調査をした。「売上増加先数-減少先数」の割合が32%減少した。また、9月末時点において、取引先からの相談があった2381先を業種別でみると、最も影響が生じている業種は「宿泊業、飲食サービス業」の24%、続いて、「卸売業、小売業」の16%、「不動産業、物品賃貸業」の15%となっている。特に、飲食業が最も厳しく、来店客数は緊急事態宣言解除後も来客数はコロナ前と比べて戻ってきていない。ヒアリング調査した融資先のうち60社ほどは、経営改善・再建が必要な先であり、支援に本腰を入れていきたい。
Q 今後の融資はどのような方針で臨むのか。
内田理事長 現状は、金融支援により、当面の資金繰りは問題ないが、ここのところコロナの感染拡大が続いており、第3波となれば、年末年始にかけて資金繰りは厳しくなる先が相当数出てくると思われる。今、やらなければならないことは、融資している企業の現況把握をし、苦しんでいる取引先に寄り添い、一緒になって課題解決に取組むことである。
そのために、新型コロナウイルス感染症対応プロジェクトチームを立ち上げた。プロジェクトチームと店舗が一緒になって、融資先の問題解決に向けて奔走している。当然ながら、今後の融資取組については、金融支援に加えて本業支援に力を注いでいく。
Q 危ない企業への融資はどうするのか。
内田理事長 支援の成否を分ける大きな要素は、経営者、代表者が経営方針にそった会社運営が出来ているのか、弱み、強みを理解し強みを伸ばすためにどのように考えているのか。どう乗り切るのか。今、厳しくても将来の見通しが立つのであれば、また、その改善策等を持っていれば、取引先が破綻懸念先であっても支援をしていく。その結果、引当金が増えてもやむを得ない。
Q これまでの無担保、無保証の融資は信用組合にとって取りはぐれがなかったが、今後の融資はリスクを負うことになるが。
内田理事長 これまでは信用保証協会のコロナ融資が中心で、100%保証であったが、今後は、プロパー融資で支援していかなければならない先も相当数出てくると思われる。当然ながら、金融機関としてのリスクは高まる。しかしながら、このような時こそ、地域の皆様のニーズに応えることが、協同組織金融機関(信用組合)としての使命であり、できる限り支援をしていく方針である。
Q リモート営業はどのくらい行っているか。
内田理事長 リモート営業はまだやっていない。今、準備しているところだ。取引先の中には数人で事業をしている零細企業が多いので、パソコンの新たな購入など費用の発生するリモート対応を求めるのは簡単ではない。今は取引先に対して、事前に電話の上、渉外担当者は、フェイスシールドをつけて、消毒液を持参し、距離を保った中で対面による営業活動をしている。
Q コロナ禍が長期化する中で、信用組合ならではの役割は何か。
内田理事長 信用組合や信用金庫は地域密着型の金融機関であり、当組合は「地域に密着し地域社会に奉仕する」ことを経営理念として、お客様との「心・ふれあい」の信頼関係を大切にしている。厳しい状況にある今こそ、取引先を訪問し本音で話し合い、全力で支えて行きたい。
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