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2020年10月20日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 近年、全国各地の河川で堤防の決壊が相次いでいる。この数年、国が管理している河川の施設能力を超える洪水や、気候変動による水災害が頻発化、激甚化が想定されていることから、国土交通省では危機管理対応として河川堤防の強化を実施するために必要な技術検討会を今年3回開催した。これを踏まえる形で、今後は、産官学が知恵を出し合って、越水した場合でも決壊しにくい「粘り強い河川堤防」づくりに向けて具体的な検討を行う。

(y-studio/gettyimages)

142箇所の決壊

 2019年の10月に東日本を襲った台風19号は、静岡県や関東甲信地方、東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨となった。これにより全国142箇所(国管理河川は6水系7河川14箇所、都道府県管理は20水系67河川128箇所)で堤防が決壊、死者行方不明99人、住居浸水3万棟、3万5000ヘクタールが浸水する甚大な被害が発生した。信濃川水系の千曲川(長野市)の氾濫では北陸新幹線の車両基地が浸水被害を受けた。

 国交省では今後も1時間に100ミリを超す豪雨が頻発するとみられることから、土で作られた「土堤」だけでは堤防の決壊を防ぐことは難しいとの認識から、新たな手法を模索することになった。

鉄鋼、コンクリートも

 国交省によると国が管理する河川の延長は約1万1000キロあり、これに自治体が管理する河川を加えると全国で約15万3000キロにもなる。国が管理する河川の堤防整備率は毎年改善されてきており、18年度は68.2%になっている。しかし、堤防の安全性を向上させるためには局所的な弱点の把握と適切な対応が必要としており、「特には川幅が狭くなる所や、低い橋の上流などは危ない」(令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会)としている。

 河川の堤防は、河川の土地利用や地盤状況などに応じて、これまで土堤を原則としつつ、表面をコンクリートで覆うなどさまざまな方法で作られてきた。一方、コンクリートや鋼矢板を使った堤防が洪水による越水などによって決壊しない構造強化型の工法などもあるが、東京や大阪等の都市部の河川の一部でしか用いられてこなかった。

 また、土堤決壊後の仮設堤防として鋼矢板などの構造材料が用いられることは多いが、土堤による本復旧完了後には撤去されるのが通常である。コンクリートの場合、一部が壊れるとその部分から浸水が起きて一気に崩壊してしまうなどの欠点も指摘されている。また鋼矢板の場合は、海岸堤防や他構造物等に使用されている場合と同様、錆による腐食を計算しての板厚が求められる。

 費用的には土堤によるものが最も安く、復旧が容易であることから日本の堤防は盛土により構築されてきた。だが、短時間で記録的な大雨が降ると、土で作られた堤防は堤防の上を超える越水により簡単に決壊するケースが多くなっている。

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