2024年7月14日(日)

安保激変

2012年10月24日

小泉元首相の靖国参拝の意義

 では、日本はどのような日中関係、日米中関係を目指すべきだろうか。それを考える上で小泉純一郎首相(当時)の対中政策が参考になる。

 小泉首相の靖国訪問は日中の政治関係を悪化させ、多くの批判を浴びた。しかし、小泉首相が中国からの批判も国内の親中派からの批判もものともせず靖国参拝を続けたことは、結果として日中関係をより正常なものとしたと評価できる。つまり、小泉首相は中国側に時には歴史問題が外交カードとして有効でないことを認識させ、一方で日本側は歴史問題が中国側にとっていかに敏感な問題かということを理解した。このため、対中強硬派で知られる安倍晋三氏がその後日中関係を改善し、「戦略的互恵関係」の種をまくことができたのだ。

 しかし、靖国問題で日中関係が悪化したときは「政冷経熱」、つまり政治関係が悪化しても経済関係は緊密な状態が続いた。ところが、現在では中国の経済力が日本のそれを追い抜き、日本経済の対中依存がより深まったため、中国は経済を外交カードとして使うことをためらわないようになっている。

 このため、日本は「政経分離」という戦後日中関係の前提を捨て去るべきである。日本は「チャイナ・リスク」を正面から受け止め、中国への過度の経済依存を改め、東南アジアやインドなど他の新興国への分散化を本格的に進めるべきだ。

 もちろん、中国に取って代われるような市場はない。だが、経済面での犠牲を払おうと、中国の国際慣行を無視したやり方をこれ以上黙って受け入れることはできないことを中国側に認識させなければならない。日中経済関係はあくまで相互依存関係だ。中国の経済は日本の技術に大きく依存している。中国が日本に経済的な圧力を加えるのであれば、それはすでに景気減退がみられる中国経済にも悪影響を及ぼすということを中国は認識せざるを得ないだろう。

日米が一体となって尖閣を守る

 日米中関係の文脈では、日米同盟の抑止力を強化し、中国の冒険主義を牽制することがなによりも重要だ。すでに始まっている陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の連携強化だけでなく、海空戦力を統合した防衛力の構築が必要である。たとえば、陸上自衛隊の部隊をアメリカ海軍の輸送艦で運ぶことや、陸上自衛隊の地対艦ミサイルをアメリカ空軍の輸送機で南西諸島に迅速に配備することも考えられる。

 日本が尖閣諸島を領有していることによって、自衛隊は東シナ海の奥深くまで偵察活動を行い、中国海軍、特に潜水艦の動きを常時監視できている。その情報はアメリカ軍にも即座に共有されているが、仮に日本が尖閣を失えば日米は東シナ海における中国海軍の動きを把握することが困難になるだろう。そうなればアメリカの「アジア重視」戦略も大きく後退せざるを得なくなる。だからこそ、日米が一体となって尖閣を守らなければならない。


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