2024年5月14日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年11月14日

 これに対し、2006年以降のパキスタンの核戦力の開発は、もっぱらインドの軍事力と戦略を念頭に置いたものである。パキスタンの支援する過激派の攻撃に対し、インドが即決戦闘(Cold Start)で報復するのを抑止するため、パキスタンは戦術レベル、作戦レベルの核ミサイルを開発している。パキスタンが過去2年間に12回行なった核弾頭搭載可能ミサイル実験、特に最近のNasrとAbdaliミサイルの実験は、このような新しい能力を実証し、インドに対し、それがインドの通常兵器による軍事侵攻に対し有効な抑止になることを示すために行われた。

 このような印パのミサイル開発と実験の乖離は、インドの国家安全保障方針の変化と、抑止の信頼性のギャップを埋めようとするパキスタンの対応の結果と見られ、最近のミサイル実験は両国が古典的軍拡競争をしていること示唆するものではない、と述べています。

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 インドとパキスタンの核開発の目的が非対称的なのは、論文の指摘するとおりでしょう。インドの核開発の主たる目的が、中国に対する抑止強化であることは間違いなく、更に、世界の強国の証としたいとの意欲もあるのでしょう。

 ただ、インドの核政策が、パキスタンを全く念頭においていないとは考えられません。事実、パキスタンはインドを念頭において核開発をしています。インドの圧倒的な通常兵力に対し、核で抑止するというのがパキスタンの基本戦略であり、インドはこれを無視するわけにはいきません。また、印パはカシミールを巡って対立しており、パキスタン内の過激派のインドでのテロ攻撃の恐れも常にあり、印パの軍事衝突の危険は排除できません。

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