その締めくくりとして当初は、「売りたい商品を見つけテレビショッピングでどのように売るかを考え、COOに対しプレゼンする」(倉澤GL)など、実践的な内容にしてきた。それよりは、何かやりきること、達成感を味わえるものが、今後の社会人として役に立つのではないか、として考えたのが「55キロのウォーキング」。
(提供:トライステージ)
「体力的な差が出ずに誰でもできるのは歩くこと。富士登山などの案もありましたが、より取り組みやすさを考えました」(倉澤GL)という。2010年の新卒者から始めた。内容は、JR鎌倉駅から箱根の強羅にあるホテルまでの55キロを歩くこと。コースは事前に下見をして問題のないことを確認し、参加者には道路を色で塗った地図を渡し、道を間違いないように指示してある。
予算は一人5,000円まで使用可能、前泊は禁止し自宅から鎌倉駅まで当日に来ること、数カ所設けたチェックポイントを通過させるほか、毎正時に電話で現在地と健康状態を報告させる。
この研修の狙いは、「必ず完遂しなければならない。完遂するまで粘る気持ちを持たせることです」(倉澤GL)という。参加者はひたすら歩き続け、会話する余裕もない状態になるが、それでもゴールを目指すことで、最後はやりきった達成感を味わえるはず。それが、今後の仕事で壁にぶつかったとき、自らを鼓舞する拠り所になるのだろう。
歩き通しの辛さを経験し、仲間との結束も感じるのは強力な思い出になる。ゴールでは丸田COOが出迎えてくれるそうだ。頑張った社員たちを和ませるための演出も参加者たちの記憶に埋め込まれる。
この55キロ踏破を経て新入社員たちは、それぞれ現場に配属される。彼らが仕事に取り組む中で困難にぶつかったとき、「あの55キロ歩いた経験があるから…」という言葉を発することもあるという。
55キロ踏破を終えると、辛さを乗り越えた感覚を言葉に置き換える課題がある。到着後に行われる、今後1年間取り組んでいく決意発表だ。書初め風に今後の展開を墨で書く。それを発表した後は、1年間社内に掲示されるそうだ。“初心忘るべからず”を重視した研修は、やがて会社を引っ張っていく彼らのベースを形成するのだろう。