2024年4月27日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年11月20日

 習氏は「党中央の指導ポストを率先して退き、高い品徳と節操を体現した」(15日の重要講話)と述べ、胡氏の潔さを高く称えた。その言葉は江氏への皮肉のようにも受け取れる。

 党大会開幕の際、江氏は、序列トップの胡氏と2位の呉邦国氏=全人代常務委員長(国会議長)=の間に座り、健在ぶりを示した。昨年7月には国外で「江氏死去」の誤報が流れるほど体調を崩したとは思えない元気さだった。

胡氏完全引退の狙いは

 胡氏の「完全引退」は、江氏の「院政」阻止が狙いとの見方も出ている。中国語ニュースサイト「博訊」(本部米国)などによると、胡氏は党長老の現政権への干渉を禁じる内部規定をつくり、中南海(党・政府所在地)の江沢民事務所を廃止し、党の重要事項を江氏に報告するという内規の廃止も決めたという。

 この情報が事実だとしても、胡氏の思惑通り、江氏がおとなしくなるのか、胡氏自身が「院政」を敷く可能性はないのか、との疑問もわく。胡氏は軍事委主席を退いたが、このほど副主席となった范長竜、許基亮両氏は胡氏に近い将軍だ。

「優等生」の習氏
権力基盤を自ら固められるか

 中国政治の伝統からみれば、党長老の現政権への影響力は大きい。習氏は江氏と胡氏の「二重の院政」の下に置かれるとの見方もある。習氏がフリーハンドの国家運営を行うためには党内や軍部で権力基盤を自ら固めるしかない。

 毛並みの良い太子党であり、江氏ら長老にかわいがられてきた「優等生」の習氏にそれができるのかどうか。ただ、高齢の江氏が精神的、身体的にいつまで気力と体力を維持できるかという問題もある。

見えない民主化

 「積極的かつ穏当に進める。中国の特色ある社会主義政治制度の優越性を発揮し、西側の政治制度モデルを引き写しにしない」。胡氏は党大会の活動報告で、政治体制改革について、後継指導部に対し、極めて慎重な申し送りをした。

 今、中国は大きな曲がり角に差しかかっている。米国に次ぐ世界第2の経済大国となったが、経済成長は減速し始め、汚職のまん延や貧富の差の広がりへの庶民の不満は高まる一方だ。国民の多様な要求をくみ上げるためにも民主化に向けた政治体制改革が不可欠だ。


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