だが、胡錦濤時代、政治体制改革はほとんど進展しなかった。5年前の第17回党大会で胡氏が行った報告と読み比べれば、今は政治体制改革により消極的になったことがはっきりする。
政治体制改革
5年前より後退か
政治体制改革に関する章名は5年前には「固く揺るがず社会主義民主政治を発展させる」だったが、今回は「中国の特色ある社会主義政治を発展させる道を歩むことを堅持し、政治体制改革を推進する」となった。
あえて「民主」という言葉を消し去り、「中国の特色ある社会主義政治」という表現で共産党一党独裁を放棄しない方針を強調した。
進めるべき政治体制改革についても、前回報告は (1)人民民主を拡大し、人民が主人公になることを保証する (2)基層の民主を発展させ、人民がより多くの切実な民主権利を享受することを保障する (3)法によって国を治めるという基本方針を全面的に実施し、社会主義法治国家の建設を加速する--と「民主」という言葉を多く用いて国民の権利を広げていく方向性を打ち出していた。
「普遍的価値」論争
それに対し、今回報告は (1)人民が人民代表大会を通じて国家権力を行使することを支持、保証する (2)社会主義協商民主制度を健全化する (3)基層の民主制度を完全なものにする--と全人代や政治協商会議、共産党と連携する民主諸党派など既存の制度を強化することで共産党独裁下の政治改革を慎重に進めることが提起された。
胡氏の2期目に「普遍的な価値」をめぐる論争があった。政治体制改革の推進論者、温家宝首相が2007年3月の記者会見で「民主や法制、自由などは資本主義特有のものではなく、人類が共通に追求する価値観だ」と発言。是非をめぐって党内で激しい論争が起きた。09年3月には党の政治理論誌、求是が「普遍的価値を中国に当てはめる思想は誤り」と批判し、決着した。
江氏が党内の保守派に肩入れ
共産党筋によると、江氏は議論が続く08年秋、党中央に対し、普遍的価値の受け入れに反対する意見書を送った。江氏は、西側の人権や民主主義は資産階級から生まれた「特定階級の思想」で、中国がそのまま受け入れれば社会主義制度の解体を招くと批判した。(09年5月13日、共同通信)