2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2012年11月22日

(1)与那国島
「尖閣諸島以外もスキだらけ」

 日本最西端に位置する与那国島の西崎。条件がよければ台湾が見えるという。「月に2回くらい、きまって台風や嵐が来る直前によく見えるのです」。そう地元の住民が教えてくれた。台湾までわずか110キロのこの国境の島は、尖閣諸島の魚釣島からも150キロ。古名を「渡難(となん)」と呼ぶほど僻遠の地で、現在でも那覇からは週4回しか航空便がない。東京からは飛行機を乗り継いで最短でも4時間半かかる。

与那国島最大の集落である祖納。集落にはコンビニもなく、小さな診療所があるだけ。急患が出れば、海上保安庁のヘリで120キロ離れた石垣島に搬送しなければならない

 島の中心集落である祖納地区は、ガジュマルの木が生い茂り南国情緒たっぷりだ。だが、穏やかなはずの集落の至るところに、自衛隊誘致あるいは反対を訴える物々しい横断幕や幟が掲げられ、場違いな印象をぬぐえない。

 島の観光協会の新嵩(あらたけ)喜八郎会長は、「観光客が驚いてしまうから、掲げないよう要請しているのですが」というが、小さな島が自衛隊配備をめぐって大揺れとなっているのだ。

 与那国町議会が自衛隊の誘致を議決したのは、2008年のこと。11年度以降の防衛大綱で南西地域の防衛力強化を打ち出した防衛省は、与那国町側の動きに呼応する形で15年度末までに100人規模の沿岸監視部隊を配備する方針を固めた。今年度は駐屯地用地の取得費などとして約10億円を計上。さらに来年度予算の概算要求では、駐屯地の敷地造成や宿舎の建設などの経費として62億円を計上している。

反対派によるのぼりと横断幕。集落の至るところに掲げられている

 ところが、配備実現に向けて着々と進む防衛省の動きに対して、地元では推進派の住民と反対派の住民が対立。島を二分する事態となっているのだ。

 反対派の住民は配備計画の説明が不十分だなどと主張。9月には町議会は住民の声を代弁していないとして自衛隊配備の是非を問う住民投票条例案を町議会に提出した。町議会は1票差でこれを否決したものの、反対派は推進派の町議に対するリコールのために署名を集める構えを見せるなど、島内では混乱が続いている。


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