2024年11月22日(金)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年11月29日

政府・日銀連携なしのデフレ脱却は困難

 金融政策が副作用をもたらさずに効果的にデフレ脱却を進めるには、政府と日銀の連携が不可欠となる。デフレが需要不足に起因する面もあるのだから、なおさら政府が需要不足を緩和する経済政策を推進し、日銀が悪い金利上昇をもたらさない範囲で強力に金融緩和政策を推進することが大事だ。

 とくに、近年の日本経済は「失われた10年」といわれる際立った成長低迷を示しており、背景には短期的な需要不足だけではない、少子高齢化などの構造的な問題もある。長期的に経済構造改革を図り、経済活性化とデフレ脱却を実現する役割は政府なしには果たせない。

 金融政策は万能ではない。確かに、金融緩和政策が長期金利や為替相場を通じて消費者物価に影響を与える経路もありうる以上、金融政策にはなお余地がある。一方、日本のデフレが需要不足なども要因とする以上、金融政策だけでデフレ脱却は実現しにくいとも見なければならない。あまりに大胆な金融緩和に偏重してデフレ脱却を図ろうとすれば、悪い金利上昇が生じる恐れも強い。日本のように、財政赤字が巨額となればなおさらだ。

 あくまでも経済と金融のバランスを失うことなく、政府・日銀ともにそれぞれの役割を十分に発揮して効果的にデフレ脱却と日本経済の活性化を図ることがなにより重要であり、そこに政府・日銀の協調がある。

 しかも、政府・日銀が緊密に連携することになれば、現状以上にデフレ脱却に向けたそれぞれの役割を積極的に推進することができる。このことは、政府・日銀ともみずからの政策の限界を露呈して経済や市場への政策効果を減じているかのような現状よりも、同じ政策でもアナウンスメント効果がより発揮されることにもなる。

 日本のデフレは複合要因によるもので、幅広い範囲の経済金融政策でデフレ脱却を推し進めなければならない。それだけに、政府・日銀の緊密な協調がいままで十分明示的にみえてこなかった方が不自然であったともいえる。今回の議論を機に、政府・日銀が目標を共有し、それぞれが持つ手段を有効に組み合わせて実行していくことを期待したい。


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