2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月11日

 韓国開発研究院客員教授のジェフリー・ロバートソン(Jeffery Robertson)が、10月27日付The Diplomat誌ウェブサイトで、今次の韓国大統領選挙においては、国民の関心は雇用創出や格差是正等の経済問題にあるため、何れの候補も外交政策について殆ど発言していないが、韓国の次期政権には、北朝鮮への対応、戦時作戦統制権の韓国への移管を含む対米関係の調整だけでなく、「中級国家(a middle power)」としての国際貢献の推進など、多くの外交課題がある、と論じています。論説は、野党側の候補者一本化前に書かれたものですが、韓国の有力大統領候補の外交姿勢と次期政権が取り組むべき外交課題について要領よくまとめています。

 すなわち、朴槿恵(与党セヌリ党)、安哲秀(無党派)、文在寅(最大野党民主統合党)の何れの候補も、国内問題に焦点を置き、外交問題には殆ど触れていないので、各候補の外交姿勢については、各候補の一般的なイメージから推測する他ない。保守派の朴槿恵は地域の諸問題につき米国支持に傾き、進歩派の文在寅は韓国が米中のバランサーとなることを目指し、安哲秀は大国間の対立に関与せず国内や地域の問題に専念するであろう。

 北朝鮮問題には、各候補とも触れているが、何れの候補も李明博時代の不安定な南北関係から脱したいとしている。特に、文在寅は、2013年6月までに第三回南北首脳会談を実現して、和平、非核化、インフラ建設推進の基礎を築き、最終的には、南北経済連合を目指すとしている。他方、朴槿恵は現政権の政策を北朝鮮との関与強化の方向に進化させるとの立場である。安候補は両者の中間といったところである。

 韓国外交の基本は北朝鮮との関係にある。次期政権は、北の恒常的な挑発行為への対応だけでなく、北の突然の崩壊や南北統一にも備える必要がある。人工的に分断された国家では、突然の変化があり得るからである。次期政権は、こうした問題につき、地域及び世界のパートナー諸国との対話を進める必要がある。

 米国との同盟関係を抜きにして、韓国で北朝鮮問題を論ずることはできないが、各候補者の外交政策が明確でないことは、米国にとって若干の懸念材料である。朴陣営は米国との強力な同盟関係維持を強調しているが、文と安の両陣営は、対中関係と対米関係のリバランスが必要としている。

 韓米間には、2015年の戦時作戦統制権の韓国への移管、2014年3月で失効する米韓核協力協定の改定などの重要懸案がある。核協力協定の改定に当たっては、韓国側は使用済み核燃料再処理の権利を認めるよう要求するであろうが、これが認められないこととなれば、韓国には反米感情の亡霊が残っているので、韓米二国間関係に影響が出よう。


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