経済の常識 VS 政策の非常識

2012年12月31日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 現状を正確に理解し、国民の負託をあらかじめ明確にして、政治家の考えを一致しておかなければ、政治主導はできない。国家の財政状況も知らず、ばらばらの意見を持つ政党が、権力に就けると期待して一緒になっても、権力を取ればばらばらになるだけだ。すべての政党が民主党の失敗から学ぶべきだ。

 国土は断固として守るとほとんどの政党が言っているが、どう守るかは誰も言っていなかった。その中で、太陽の党が防衛力倍増と言ったのは評価できた。南シナ海の島々を奪取することでフィリピンやベトナムには遠慮していない中国が、日本には多少遠慮しているようであるのは、日米同盟と海上自衛隊の力を認めているからだろう。自衛隊の力を高めるのは抑止力になる。

 私は、無理やり需要を作る必要があるなら、無駄な公共事業をするより、防衛費を増額した方が良いのではないかと思う。多くの支出がアメリカの防衛産業に流出するが(経常収支の黒字減らしが必要な時代ならこれも良かったが)、国内でライセンス生産できる部分も大きい。

 自衛艦や巡視船の船体ならば、ほとんどが国内の需要になる。自衛艦が外国のコンテナ船に衝突されて艦首部分がほぼ全壊した事故があったが、この程度の船体なら、どの造船所でも造れるだろう。需要喚起策としても、公共事業よりも良いではないか。なぜそうならないのだろうか。

 公共事業では全国津々浦々の建設会社に仕事が落ちるが、防衛産業では特定の企業にしか落ちない。大型船の船体を造れる企業は、ハイテク武器を造れる企業よりずっと多いが、建設会社ほどの数はない。これが、防衛支出を需要喚起に使えない理由だろう。国土は1㍉たりとも譲らないと勇ましいことを言っているわりにはどうしようもない状況があるわけだ。

 デフレ脱却は多くの党が唱えているが、自民党の政策が一番具体的である。日本銀行が十分に金融緩和すればデフレから脱却できる、日銀がそうしないのなら、日銀法を改正してもそうさせるというものだ。日本の金融学者やエコノミストには、金融政策の自民党理論を否定する人が多いが、経済学の教科書には、物価は金融政策で決まると書いてある。教科書は、自民党の金融理論を支持しているのである。

 私は教科書を信じているので、この点は自民党に期待している。政権を奪取した自民党には、教科書と日本の専門家のどちらが正しいか、しっかりと決着を付けていただきたい。

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