経済の常識 VS 政策の非常識

2012年12月31日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

社会保障の具体的な削減に触れない欺瞞

 残念ながら、どの党も、争点にしていない議論がある。社会保障と負担の問題である。消費税を5%上げても、将来の社会保障費を賄うには到底足りない。詳細は、本誌12年3月号「年金議論を避けるな 社会保障は維持できない」を参照いただきたいが、高齢者一人あたりの社会保障支出を現在のままにしておけば、2060年には60%の消費税増税が必要になる。

 高齢人口が増大するとともに、生産年齢人口が減少していく。労働生産性の上昇がなければ、GDPは減少し、消費も減少していく。当然、消費税による税収も減少していく。しかも、生産性が上昇するときには、賃金も上がるから、年金も医療福祉に関わる人の人件費も上げなければならない。生産性の上昇は望ましいことだが、生産性が上がっても社会保障支出は増やさないようにしなければ財政は楽にならない。

 いくつかの政党が、生活保護の適正化を訴えている。例えば、自民党の公約には、生活保護法を抜本改正して不公正なバラマキを阻止し、支給水準を1割カットするとある。また、自民党のプロジェクトチームは、自治体が食費などを現物給付することなどを骨子とした改正案をまとめている。

 給付水準の引き下げは結構だが、現物給付は金銭給付よりもコストがかかる。物を買って配れば、役所の買い物下手とその人件費で、お金を配るより高くつく。何より、生活保護予算は3・7兆円にすぎない。1割カットしても3700億円しか削減できない。

 現在100兆円を超える社会保障支出の伸びを抑えるには、とうてい足りない金額である。解決するためには、現実的な消費税増税幅と社会保障支出のカット率を考えなくてはならないが、高齢者の反発を恐れて、この論点をどの政党も公約に入れていないのは情けなかった。

[特集] どうすれば良くなる?日本の政治

◆WEDGE2013年1月号より

 

 

 

 

 

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