おそらく安倍氏とのつきあいが長く、食い込んでいる記者がいるのだろう。これら以外の報道機関が特ダネを報じていないということもないのだろうが、筆者の経験からも、NHKや産経新聞は安倍氏がらみの独自のニュースが多く出ているという印象はある。最近では、就任後の初外遊をアメリカでなくベトナム、タイ、インドネシアと先駆けて報じたNHKや、韓国との関係改善のために特使を派遣すると報じた産経などがそれにあたるのではないか。
メディアとしての役割
今回の安倍官邸は情報や仕事の「見せ方」にも工夫しているのではないかと思う。情報発信のツールとしてツイッターを使っているほか、成人の日にはLINEを使って新成人にメッセージを送るなどソーシャルメディアを使って若い人の関心をひきつけている。
1月15日に日本銀行の総裁選びに関して意見を聞くという名目で昼食時に学識経験者と懇談した際にも“工夫”が見られた。実際には具体的な名前が出るような会合ではなかったが、いかにも重要な会議のように演出することでメディアの注目を集めた。こうすると、候補とされる人の名前が自然と新聞でとりざたされるようになり、既成事実化されてゆく。こうした効果を期待しているようにも思える。
しかし、こうした戦略に乗せられてしまってばかりでは、メディアとしての役割は果たせない。安倍氏の政策は果たして正しいのか。特にアベノミクスと言われる経済政策にリスクや副作用はないのか。いま正に直面しているアルジェリアの人質事件への対応に手抜かりはないのか。こうした問題についてメディアはしっかり検証する力が求められていると思う。
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