1月16日、アルジェリア東部のイナメナスで発生したイスラム過激派による人質事件で、プラントメーカー日揮の日本人社員を含む外国人が不幸にも犠牲になった。この事件の遠因と言われているのが、アルジェリア南部と国境を接している隣国マリでのフランスによる軍事介入だ。
「イスラム過激派」と一緒くたにされるが……
人質事件の5日前、マリのトゥラオレ暫定大統領から「イスラム過激派のマリ南部への侵攻阻止に向けた軍事介入の要請」を受け、旧宗主国のフランスは昨春からマリ北部を実効支配するイスラム過激派に対する空爆を開始した。
マリでは昨年3月22日、「民主主義再建・国家再興のための国家委員会」を名乗る国軍兵士が、国営テレビを通じて、国家指揮権の掌握と憲法停止の声明を読み上げ、クーデターを成功させた。
その隙をついて4月9日には、トゥアレグ族の武装集団「アザワド国民解放戦線(MNLA)」が北部から撤退した政府軍の役割を担うことを発表。トゥアレグ族はサハラ砂漠西部の遊牧民で、リビア内戦下でカダフィ政権を支援することで軍事力を獲得したとみられている。
さらに5月26日には、MNLAとイスラム過激派武装集団「アンサル・ディーン」が合併し、北部に独立国家を創設することで合意。だが、この「アンサル・ディーン」を、人質事件首謀者の出身母体である「イスラム・マグレブ諸国のアル・カイダ(AQIM)」と「西アフリカ統一聖戦運動(MUJWA)」が支援する形でMNLAを抑え込んだ。
よく「イスラム過激派」と一緒くたにされるが、実はマリ北部を掌握しているのは「アンサル・ディーン」、AQIM、MUJWAという別々の組織なのだ。これら3勢力が1月10日にマリ中部の主要都市コンナを制圧し、南部にある首都バマコの北東450キロまで侵攻する構えを見せた。フランスは、マリ全土が無政府状態となるのを食い止めるため、南部に残った正統政府を支援する形で軍事介入に踏み切った。