「Wedge」2021年6月号に掲載され、好評を博した特集「押し寄せる中国の脅威 危機は海からやってくる」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(
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※年号、肩書、年齢は掲載当時のもの
米中新冷戦の中、いまや紛争は「起こるかどうか」ではなく「いつ起こるか」の局面にシフトしていると言っても過言ではない。
このような事態は、歴史を戦略的に読み解く地政学の理論家たちはすでに見通していた。 米国で活躍したオランダ出身の地政学の理論家にニコラス・スパイクマンという人物がいる。彼は太平洋戦争の最中である1942年に出版した著書『世界政治の中の米国の戦略』(America's Strategy in World Politics)の中で、南シナ海での米中衝突が不可避であることを主張しているのだ。
ここでカギとなる概念が「アジアの地中海」というものだ(下図参照)。具体的には「台湾、シンガポール、オーストラリア北端のヨーク岬半島に位置するトレス海峡を結ぶ三角形」にある海域である。スパイクマンは、この地中海では「中国が経済的に強力になれば、その政治的影響力も同じように大きくなる。そしてこの海域が、英国、米国、そして日本のシーパワーではなく、中国のエアパワーによって支配されるようになる日が来ることを予測することさえ可能だ」と言い切っている。