ゴロフキンはアルバレスと2017年9月、18年9月とミドル級で聖地ラスベガスを舞台に「世紀の一戦」と銘打たれて2度対戦している。2戦とも判定にもつれ込んで1敗1分けの結果となっており、自身の戦績においてアルバレスはそれぞれ唯一の黒星とドローをマークさせられた因縁の相手だ。
しかも2戦目に喫した判定負けは「GGGが勝っていた」とする指摘が試合後に多くの有識者から飛び出す不透明なジャッジになっていたことから、両者の第3戦は決着戦として米国のボクシングファンの間でも実現が強く望まれている。そういう海の向こう側のムードが後押ししていたことも、もしかすると米メディアが半ばフライング気味に「Canelo VS GGG Part3」実現内定のニュースを正式発表前に報じた理由につながったのかもしれない。
このゴロフキンとアルバレスの対決は、米経済誌「フォーブス」も昨年末に特集した「2022年に実現が見込まれる魅力的なボクシングマッチ」の中で5戦のうちの1つとして厳選している。
「勝てない」と思ってやってはいない村田
マッチメイク上のスケジュール面を考慮すれば、この時期からゴロフキン陣営が水面下で9月のカネロとのリマッチに動き出すのも特段不思議なことではないだろうが、こうやって表に出てしまうと村田側にとっては面白いはずがない。ゴロフキンは自分を飛び越し、視線はカネロに向けられているのではいか――。口にこそしないが、そう疑念を抱いているとしても無理はないだろう。
ただ、公にされている米メディアでの報道を見聞きする限り、ゴロフキンはカネロ戦内定のニュースを「時期尚早」ととらえ、日本で行われる4・9との統一戦に全神経を集中し、対戦相手である村田のことも「強く、素晴らしい選手」と評すなど心底リスペクトしているようだ。
一方の村田もロンドン五輪金メダリストの肩書きを背負ってアマからプロへ転向した直後、ゴロフキンのトレーニングキャンプに参加し、その当時から「GGG」の存在を強烈に印象付けられ、将来の対戦を目標として胸に秘め続け、ついにここまで漕ぎ着けた。だからこそ当然のごとく村田は悲願だったゴロフキンとの対決へ向けて燃えに燃えており、米メディアが煽る9・17「GGG対カネロ」への踏み台になるつもりなど毛頭ないに決まっている。
ちなみにゴロフキン戦の延期前、昨年末に行われると発表された同年11月12日の会見に出席した村田は「勝算はあるか」と問われ、次のようにもコメントしている。「勝算があるかって言われると『勝てねぇだろ』って言われている気持ちになるわけですよ。そういう気持ちがないわけです。勝てないと思っていないということです。勝てないという気持ちでリングに上がらないですから」
それでも前記したように村田の「勝ち」を予想する声は少ない。中量級の中でも異次元レベルのハードパンチャーであるゴロフキンと打ち合えば、いくらタフネスの村田と言えども勝ち目は薄いだろう。これまでの村田の「定石」とされている、鉄壁のガードを固めながらワンツーで得意の右ストレートを打つスタイルではなかなか勝機が見い出せないように思われる。