田舎で育つほどハーフに対する差別が厳しいという話をよく聞くが、そのとおり友人も苛められて育った。ある時期は、どうしても日本を肯定的に見ることができないと悩んだそうだ。だからといって、中国に行けば中国人として認めてもらえるわけではないということもわかっていた。
中国語を話せず、中国の文化もかじる程度にしかわからないのだから。この友人のなかで深刻なアイデンティティ・クライシスが起きているということになる。個人的な体験をもとにアイデンティティがどちらかの国に傾くことはハーフにとってよくあることだが、この問題を克服するまでは容易ではない。
北京生まれで、アメリカで教育を受けた友人の日中ハーフの場合、大学は中国へ進学し、大学院は日本で教育を受けた。母親が中国人だとわかるや差別的な扱いを受けた友人がいる一方で、「自分は母親が日本人ということもあって、いじめなどにはあわなかった」と話していたところが印象的だ。彼女の場合、アイデンティティはどこの国にもなく、「自分は国際人」と言いきり、日本で育った日中ハーフよりも自信に満ちていたように見受けられた。
日本や中国、そしてアメリカのことを客観的に見ることができ、多文化・多人種で育ったアメリカの影響が大きいのかも知れない。
外国人の集住による軋轢
文化の違いによる問題はなにも夫婦間だけではない。急増する外国人労働者が引き起こす問題も深刻だ。
外国人労働者の受け入れ数は1991年末の122万人から2011年の208万人へと20年間で70%も増加した。これだけもの増加にともないさまざまな問題も起きている。たとえば、外国人の定住・集住が進むことにより、もともと居住していた住民との間の軋轢が各地で生じている。
埼玉県川口市の芝園団地、埼玉県本庄市の公営住宅、千葉県の稲毛海岸の高洲団地、船橋市の行田団地、長野県駒ケ根の公営住宅、福井県、滋賀県、豊田市等々の公営住宅では、中国人の入居が急増するようになった。福井県、滋賀県、豊田市ではあまりの外国人労働者の急増に住民の反対が多く、入居を制限するようにした自治体もあるほどだ。
この他にも新たに流入してきた外国人住民と地元の住民のあいだに軋轢が生まれるケースは相次いでいる。池袋駅の北口周辺の地区といえば、今や東京きってのチャイナタウンとなり、中国人が経営する店舗は200程に上り、10万人の利用客がいるといわれる。
チャイナタウンには、英語、中国語、日本語をこなす中国人の子供が通う保育園などもあり、中国人向けのインターネットカフェや旅行代理店、新聞社などもある。だが地元住民との間で、中国人のごみの出し方が悪い、モラルがない、町の共有する街灯代を支払わない等のトラブルが発生している。