2024年11月22日(金)

world rice

2013年4月18日

 そこで最初に選んだのが、カリフォルニアにある稲育種試験場で開発された中粒種「M-401」という品種でした。周囲の協力に加え運にも恵まれ、販売を開始してから数年で「米国で一番おいしいごはん」と、言ってもらえるようになりました。

 この中粒種のブランド米を販売し始めた数年後に、市場で競合する複数の生産者や精米会社が、「コシヒカリ」や「あきたこまち」など日本の短粒品種の生産をして、販売を始めました。しかし、新商品としてスーパーに並んでいたコメを食べても、「おいしい」とは感じませんでした。

 それは、目標とする商品イメージ、つまり「ごはんにしておいしいコメ」をはっきりと定めて生産していなかったからです。目標に基づいて、各工程から改善していかないと、コシヒカリであってもおいしくはならないのです。私は、カリフォルニアで事業を始めるにあたって、従来の工程をすべて見直しました。

 結果として同じコシヒカリでも、私の対策によってつくられたコメは、安定した商品になっています。しかし、それから20年経った今でも、カリフォルニアのコメ業界では、この問題の根本的な解決策はとられておらず、品質が不安定であることに悩んでいます。

 種まきの方法が違っても、コメつくりに使う機械の大きさが違っても、「おいしいごはん」になるための条件は、世界のどこで栽培しても同じです。農産物由来の商品つくりはその元である種から、食べるところまでの各段階で、その商品としてのあるべき姿を理解し、想像しながら商品をつくることが大事なのです。

◆WEDGE2013年4月号より

 

 

 

 

 

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