2022年8月14日(日)

BBC News

2022年8月4日

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ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ、BBCニュース台湾

台湾にとって、今回のナンシー・ペロシ米下院議長の訪問は、支援であるとともに、その正統性を示すものでもあった。

台湾は、軍事やその他の分野でアメリカの支援が必要だ。そして、正統性を認めてもらうことを心から欲している。中国が言うような「反抗的な省」ではなく、独自の民主政府とそれを維持する決意を持った、誇り高い国だと認めてほしいのだ。

だからこそ、米下院議長の訪問には大きな意味がある。台湾が尊敬しているのはアメリカであり、中国ではない。

そのことは、ペロシ氏の訪問を伝えた、台湾の多くのテレビ局の興奮ぶりからも明らかだ。

各局がペロシ氏について、あらゆることを調べ上げていた。服の色、ヒールの高さ(82歳にしてはかなり高そうだった)、「1961年にジョン・F・ケネディ大統領と撮った写真ではオードリー・ヘップバーンのようだった」という事実にまで及んだ。

首都台北では、ペロシ氏への愛にあふれた出来事が見られた。

立法院(議会)の前では3日、ペロシ氏が出てくるのを一目見ようと、早い時間から多くの人が集まった。ほぼ全員、中国による報復の可能性は気にしていなかった。

「中国の脅しには慣れている」と女性銀行員は言った。「長い目で見れば、今回の訪問は米台関係の発展にとって良いことだ」。

「中国ははったりをかけている」と話したのは70歳の男性だ。「短期的には報復するかもしれないが、北京が過剰に反応すれば、アメリカの罰を受けることになる」。

50歳の主婦は、「中国はこんなふうに台湾をいじめてはいけない」と言った。「今回の訪問は普通だ。(中略)中国がこうしたことを続ければ、さらに多くの国を遠ざけるだけだ」。

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しかし中国にとって、今回の訪台は普通ではない。外交規範に対する言語道断の違反行為と受け止めている。

アメリカは1979年、ジミー・カーター大統領が中華人民共和国を承認し、台北の「もう一つの」中国政府の承認を取りやめることで合意した。

北京の中国政府にとっては、これで一件落着のはずだった。しかしアメリカは、台湾を完全にはあきらめなかった。台湾が軍事独裁から民主主義へと変化を遂げると、この「勇気ある小さな民主主義」を中国の脅威から守るべきだという意識は、アメリカで高まる一方となった。

中国が、ペロシ氏の訪台への怒りを言葉だけでは発散し切れないであろうことは、今やいっそう明らかになっている。

進入禁止区域をぐるりと設定

台湾周辺で4日から4日間、大規模な進入禁止区域を6カ所設けるという中国の発表は、不吉さを感じさせるものだ。中国は1996年の「台湾海峡危機」でも同じことをした。だが、当時の進入禁止区域はすべて、台湾が領海とする海域からかなり離れていた。

今回は、6つの禁止区域のうち3つが、台湾の主張する領海(沿岸から12カイリ)を侵すものだ。これは前代未聞だ。台湾の国防部(国防省)はすでに、この動きを国連条約の違反だとし、台湾に対する空と海の封鎖に等しいと主張している。

もし中国が、これらの地域に船や航空機を進入させれば、台湾が主張する領海・領空の侵害に相当する。台湾は、自らの海域を守らなければならないと感じるかもしれず、緊張が一段と高まる。

米海軍はこの事態を注視している。すでに空母ロナルド・レーガンが、近くのフィリピン海を航行している。

ペロシ氏は台湾を去り、韓国や日本へと向かった。しかし今回の台湾訪問の影響は、もうしばらく続きそうだ。それは、大規模な米中危機に発展する可能性もある。

(英語記事 As China broods, Taiwan is in a 'Pelosi lovefest'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-62417277

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