2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月8日

 中国は一方で自国経済の保護に汲々としながら、他方で米国を保護主義だと世界貿易機関(WTO)に苦情を提示する。フィナンシャルタイムズ紙のコラムニストで副編集長も務めるラナ・フォルーハーは、4月1日付けの論説‘China’s hypocrisy on trade’で、中国の態度は偽善でありWTOは新たな制度を構築すべきだ、と論じている。要旨は次の通り。

(Igor Kutyaev/gettyimages)

 中国政府は、バイデン政権の看板政策であるインフレ抑制法に異議を申し立てるためにWTOに提訴しているが、正気なのかと言いたい。なぜなら、中国の経済モデル全体が二重基準の恩恵を享受しているからだ。

 他の国々は、中国の特異で野卑なまでもの差別的な対外取引政策を甘受させられているからだ。にもかかわらず中国は、米国政府がクリーンエネルギーの生産者に対し税額控除という支援策を実施すれば、それをWTO規律違反だと言って反対の狼煙を上げる。そんな中国の偽善に気付かない者はいない。

 中国経済は結局、クリーンエネルギーにせよ、電気通信にせよ、人工知能にせよ、そうした戦略的産業に対しては数十年にわたり補助金と保護主義的な囲い込み政策を実施してきている。それらを中国は、ひた隠しに隠してきている。

 中国が「保護主義」を問題視するのは、米国や欧州が自国の産業を支援するために関税や補助金を課そうとするときだ。これは、気候変動への対処や労働者のためのグリーン経済への移行といった正当な理由があっても問題視する。

 ところが、中国の保護主義政策は、単なる現状維持だと大目に見られている。中国の国家資本主義の出発点だと単純に理解されている。西側諸国は、切歯扼腕(せっしやくわん)しながら、この構図が変わるのを待っている。


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