イランはウクライナでの使用のために無人機をロシアに送った。しかし、米高官によれば、そのいくつかはすでに機能不全を起こしたと言う。ワシントン・ポスト紙の国家安全保障担当記者エレン・ナカシマらの8月29日付の記事は、次のように解説する。
・米情報機関の情報によると、8月19日、貨物機はレーダーなどの軍事目標を攻撃し得る少なくとも2種類の無人機を積んでイランを発った。
・イランの無人機はロシアの対ウクライナ戦争を相当に強化しうるが、米国の安保関係者によると、ロシア人による初期的試験で、イランの無人機は多くの欠点をさらけ出したと言われる。
・イランの無人機はロシアのウクライナ戦争での重要なギャップを埋める可能性がある。ロシアは1500~2000の偵察無人機を持つが、敵の領土深く目標を攻撃する無人機を少ししか持っていない。ウクライナは紛争の初期からトルコ製の攻撃用無人機を使ってきた。
・専門家によれば、「イランはイエメンのホーシー派に軍事用無人機を提供していたが、ウクライナのように電子ジャミングや防空システムのある中で使ったことはない」。
・別の専門家は「ロシアは米国のように無人機を開発して来なかった、今その必要性に目覚めたが、提供してくれるところは中国とイランしかない。中国は米国の制裁を招きかねないので消極的で、イランしか供給国はない」と言う。
・ロシアは無人機生産を欲しているが、西側の制裁と輸出管理で邪魔をされ、半導体を入手できない。闇市場でしか入手できない。半導体は精密誘導兵器、航空機、戦車にまで必要であるが、無人機をイランから輸入できれば、貴重な闇市場の半導体を節約できる。
・ロシア軍がイランに重要技術を頼らなければならないのは、その武器在庫がどれほど足りないかを示すものだ
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イランとロシアの軍事協力が、無人機をイランがロシアに提供するなど進んでいる。イランとロシアの同盟関係ができつつあるのではないかと懸念する向きもあるが、イランとロシアの関係は伝統的に相互不信が強く、信頼関係に裏打ちされた同盟関係になることは考え難いように思われる。
今回の無人機の取引は、ロシア側の無人機需要と制裁下のイラン側の輸出収益確保願望が一致したので成立したものと考えていいのではないかと判断できる。