2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年7月2日

 「金欠」となる各商業銀行は保身のために今後、企業に対する融資をできるだけ減らしていく方針であろう。とくに、担保能力の低い民間の中小企業への貸し渋りは必至だ。そうなると、中国の製造業の大半を支える中小企業の経営難はますます深刻化してしまい、すでに始まった実体経済の衰退は歯止めが効かなくなる。

経済の果てしない転落はもはや止められない

 今まで、各銀行から出た資金の一部はいわば「影の銀行」を通して各地方政府に流れて彼らの開発プロジェクトを支えてきたが、今後、こうした「闇の資金」の水源が正規の銀行の資金引き締めによって止められると、後にやってくるのはすなわち、「影の銀行」の破綻による金融危機の拡大と、多くの地方政府の財政破綻であろう。

 「金欠」となった各商業銀行は今後、深刻なバブルと化した不動産部門への融資も大幅に減らすのであろう。回収期間の長い個人住宅ローンも当然融資抑制の対象となる。そうなると、資金繰りが苦しくなっていく不動産開発業者はいずれ、手持ちの不動産在庫を大幅に値下げして売り出して投資資金の回収に励むしかない。一方、住宅ローンが制限される中で不動産の買い手がむしろ減っていくから、その相乗効果の中で不動産価格の暴落は避けられない。今までは金融バブルの中で何とか延命できた不動産バブルは今度こそ、崩壊の憂き目に遭うのであろう。

 中国著名の経済学者の馬光遠氏は先月26日、「(経済危機の)次の爆発地点は不動産部門だ」との警告を発したのもまさにその故である。経済専門紙の「証券日報」も25日、銀行の「金欠」のなかで不動産開発業者の資金繰りがますます苦しくなるから不動産価格の下落が不可避との見方を示す論文を掲載している。

 どうやら不動産バブルの崩壊はもはや避けて通れないであろうが、崩壊が一旦目の前の現実となればそれは当然、さらなる金融危機の拡大とさらなる実体経済の衰退を招くこととなるから、経済の果てしない転落はもはや止められない。「2013年の中国経済の死」という、今年年初の私のコラムのささやかな予言は不幸にも(?)当たることになりそうである。

[特集] 中国経済の危うい実態


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