英フィナンシャル・タイムズ紙のヘンリー・フォイ欧州外交特派員が2月15日付け同紙に、‘A year of war in Ukraine has left Europe’s armouries dry’(ウクライナでの戦争の1年は欧州の武器庫を空にしている)との論説を寄せ、欧州諸国のウクライナ支援の負担を解説している。論旨は、次の通り。
ウクライナ戦争はほぼ1年になる。西側政府は兵器の形の380億ドルを含め、キーウに1100億ドル以上の支援を与えた。しかし、多くの国で武器庫は空になっている。このレベルの支持をいつまで、何によって続けられるのか。
欧州は当初、キーウが数日のうちに陥落すると予測していたが、例のない団結と支持へと急速に変わった。各国の軍は資金不足だったが、力を振り絞り、数週間のうちに、兵器はポーランド・ウクライナ国境を越えて東に流れた。
しかし、プーチンの部隊が民間インフラと軍事目標の双方を狙った12カ月の厳しい戦争は、欧州の準備不足の防衛部門に対する大きな圧力となった。欧州の工場はウクライナの1週間分の必要を満たすための砲弾をやっと作れている。弾薬の待ち時間は倍以上になっている。
北大西洋条約機構(NATO)東部の国々が持ち、ウクライナの兵士が使い方を知っている旧ソ連製装備の在庫は使い尽くされた。装甲車など、西側製の兵器を送る決定はファンファーレで迎えられたが、軍がどれほどの改装が必要かを知り、数週間、数カ月の遅延に見舞われている。
ウクライナが必要とする反撃のための手段は届いていない。欧州のウクライナ支持の政治的意思に疑問はないが、反撃手段を迅速に届ける能力に問題がある。当局者によると、これへの答えは防衛産業との大規模で長期の契約(当面の戦争努力のためと、ウクライナに平和が訪れたときにも購買を続けるとの欧州諸国政府の約束を含む)である。
NATOは昨年末、すべての加盟国に彼らの在庫をチェックするように命じ、その結果をもとに各国政府に新しい契約を結ぶように求めている。
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ロシアの春季大攻勢が予想される中、西側のウクライナの軍事支援が欧州での弾薬生産の遅れや軍用車両のための部品製造の遅れなどで問題に直面している。この論説はその状況を指摘している。
改善策は、防衛産業に長期的に安定操業がなしうるような大規模・長期の契約を結び、投資もさせるということであろう。欧州ではそのために多国間協力も考えられている。歓迎できる。
弾不足ではどうしようもないので、この論説の指摘は重要である。日本の防衛力整備についても、継戦能力は重視されるべきポイントである。