昨年2月24日に勃発したロシアによるウクライナ侵攻から、間もなく1年が経過しようとしている。
昨年秋、東部ハルキウ州および南部ヘルソン州での大規模反転攻勢で、ウクライナは2月24日以降にロシアに占領された領土の40%を解放したとされる。
だが、それでもなお、2014年に併合されたクリミア半島などを含む全国土の約20%をロシアに占領された状況にあり、現在展開中の戦線の長さは1500キロメートルに及ぶとされる。ロシアは昨年10月以降、ウクライナ全土に対する民生インフラへの攻撃も続けており、ウクライナの国民生活は困窮を極めている。
現在ロシアは膠着した戦況を変化させるため、次の一手を繰り出すタイミングを見計らっているとされる。ウクライナ当局者は、ロシアが今年2月以降にキーウ再侵攻を含む大規模攻勢を計画していると主張する。ウクライナ側としても、米欧からの軍事支援を強く要求しながらこれに立ち向かう姿勢を見せている。こうした状況で、ロシアとウクライナの双方が現時点で「停戦」を全く視野に入れていないのは当然であろう。
ロシア政府は「ロシアは停戦交渉を行う準備がいつでもあるにもかかわらず、ウクライナがそれを受け入れようとしない」とする一方、ロシアが昨年10月に「併合」したと主張する東部・南部4州(ドネツク州、ルハンシク州、ザポリージャ州、へルソン州)に関する交渉には一切応じないとしている。
これに対してウクライナ政府は、ロシア軍が国内に展開している状況での停戦交渉はあり得ないとの立場を崩しておらず、また、ウクライナの主権と領土的一体性の回復は妥協不可能としている。そして本稿執筆時点では、ウクライナ国民の8割以上が、ロシアに対する徹底抗戦を強く支持しているとされる。
筆者はこの侵攻開始直後から、毎日のように「この戦争の『落としどころ』はどこか」と尋ねられてきた。端的に言えば、現段階では落としどころなど存在しない。
そもそもプーチン大統領は、極めて短期間のうちにウクライナ制圧を完了することができると考えていたとされる。その見通しが完全に狂った今、プーチン大統領自身が戦争終結に向けた明確なビジョンを描けていないのであろう。
しかし同時に、プーチン大統領が侵略を終わらせると決定しない限り、この戦いは終わることはない。ウクライナは米国や欧州諸国からの支援を求めながら徹底抗戦を継続するであろうし、米欧諸国は戦争長期化のリスクと、ロシアによるエスカレーションのリスクを天秤にかけつつも、ウクライナに対して可能な限りの支援を続けるしかない。
かくして戦争は長期化・泥沼化の様相を呈しているが、この状況を人為的に打開する余地は極めて少ないのが実情である。