2024年12月22日(日)

バイデンのアメリカ

2023年2月24日

 「ロシア侵攻1年」直前の去る20日、バイデン米大統領が極秘でウクライナ訪問を強行したことは、世界に大きな衝撃と驚きをもたらした。今後の最大の焦点は、引き続きウクライナ支援継続に向けて、米国内はもちろん、西側諸国の結束をどこまでつなぎとめられるかにかかっている。

ロシアによるウクライナ侵攻から1年を前に、バイデン大統領(左)がウクライナを電撃訪問した(Ukrainian Presidential Press Service/ロイター/アフロ)

キーウ電撃訪問が与えた衝撃

 毎年2月第3月曜日は、米国では連邦祝日の「President’s Day(大統領の日)」にあたる。合衆国の過去と現在のすべての大統領をたたえる日として知られ、政府機関、議会はもとより、裁判所、銀行から株式市場に至るまで休業する。

 バイデン氏もちょうどその日に当たる20日、自邸でゆっくり休養するものと国民の誰もが思っていたに違いない。ところが、全米の茶の間のTV画面に映し出されたのは、戦時下のウクライナの首都キーウ市街をゼレンスキー大統領と肩を並べて歩く自国大統領の姿だった。

 激戦の渦中にあり、しかも米軍部隊も駐留せず安全確保も定かでない外国への電撃訪問だっただけに、内外に与えたインパクトも大きかった。

 その主な狙いは①ロシア相手に果敢に戦い続けるウクライナ軍および国民の鼓舞、②北大西洋条約機構(NATO)はじめ同盟諸国の結束と継続的支援取り付け、③米国民に対する理解と協力呼びかけ――の3点にあったことは間違いない。

 バイデン大統領はゼレンスキー大統領との会談及び、その後の共同記者会見で「(侵攻から)1年後、キーウは持ちこたえ、ウクライナは持ちこたえ、(西側陣営の)民主主義は持ちこたえた」「われわれは大西洋から太平洋まで世界中の国々の連合を構築した」と強調したことは、まさにその意図を裏付けたものだった。

 英「ガーディアン」紙の現地報道によると、首都キーウの市民たちは、バイデン大統領の訪問が報じられると、一様に「とても勇気づけられた」「心温まる決断」ときわめて好意的な反応を示す一方、世界最強国の指導者が支援にかけつけたことを許した侵略国ロシアについて「すべてが失敗」といった厳しい指摘が相次いだという。

 実際、ロシア国内では「バイデン訪問はロシアに対する侮辱行為以外の何物でもない」「わが国軍は(ウクライナでの)聖戦の最中にランチタイムで息抜きしているのか」「よりによってプーチン大統領の年に一度の重要教書演説の前日に、バイデンのスダンドプレーにしてやられた」などの怒りや不満が、軍部タカ派の論客たちによるネット上のやり取りで渦巻いたと伝えられる(20日付け米CNNテレビ)。

 こうした意味で「2月20日」は、バイデン氏にとって歴史的ともいえる特筆すべき「大統領の日」となったことは間違いない。


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