2024年11月22日(金)

復活のキーワード

2013年7月16日

 「東京は機械ばかりが跋扈する市場になってしまった」

 昨年、取引所業界の専門家がぼやいていたのを思い出す。証券会社などに籍を置き、日本株を売買する日本人のトレーダーが、この4~5年の間に兜町を見捨て、香港やシンガポールに移住してしまった、というのだ。しかも彼らはかの地で引き続き日本株の売買を続けている。

トレーダー、資産家が日本から去っていく

 なぜ、拠点を移すのか。彼らも好き好んで海外暮らしを選んでいるわけではない。最後は税制など日本の規制に行き着くのだという。有価証券取引税や所得税などコストが高く、同じ日本株を売買する際に香港などの方が圧倒的に有利になるのだそうだ。

 法人税や所得税、相続税といった税金の税率はアジアの国々に比べて日本は高い。企業オーナーや資産家が日本を脱出し、相続税がない国や所得税率が低い国に移住する傾向はここ5年ほど続いていた。とくに民主党政権が資産課税を強化する姿勢を見せていたことで、その流れは一気に加速していた。

 アベノミクスで国内景気がデフレから脱却しそうな気配が見えたことで、その流れが止まるかと思いきや、止まらない。むしろ景気回復でインフレになることを予想、インフレによる資産の目減りなどを懸念して、円高のうちに資産を移そうと考える人が少なくないという。当然、資産家がいなくなれば、日本株の売買にとってもマイナスだ。しかも資産家の場合、短期の売買よりも大量の株式を長期にわたって保有するケースが多い。そんな投資家が日本国内からジワジワと減っているわけである。

 自民党の日本経済再生本部(本部長・高市早苗政調会長)は政府の成長戦略よりひと足早く「中間提言」をまとめた。その中には「金融・資本市場の魅力拡大(『5年以内』に世界一へ)」という項目がある。

 「香港、シンガポール、上海などのアジア新興資本市場の台頭を踏まえつつ、日本の資本市場がニューヨーク、ロンドンなどとも比肩できる世界の代表的な市場としての評価を5年以内に確立する事を目指し、市場の魅力拡大に最大限努める」としている。


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