猛暑の中での参院選が終盤を迎えている。ジャーナリストの端くれとして、これまで何度も国政選挙には直面してきたが、疲労感と興奮が交錯することの連続だった。国政に限らず、駆け出しのころから様々な選挙に携わってきた。いまもそうだが、候補者の経歴書や顔写真集めに始まる準備作業は結構な重労働で、嫌になるほど忙殺される。一方で、日本の政治が変わるかもしれないという期待と興奮が取材を通じて高まってくる。経済ジャーナリストになってからは当然ながら経済問題や経済政策が選挙でどう議論されているかを注目し、フォローしてきた。
経済政策の議論が不十分
ただ、終盤の佳境を迎えている選挙戦をウォッチしているといまひとつ盛り上がりに欠ける点は否めない。理由は何かと考えてみたが、やはり思い至るのは、事前の世論調査などで自民党と公明党による参院での「過半数超え」が確実になっているからだろう。最後まで予断を許さないとはいえ、各種世論調査で選挙の行方がおぼろげながら見えていることに加え、各党の主張における争点がはっきりせず、有権者に「選択」という気分がわかないことも理由にあるのかもしれない。
経済問題に関してはアベノミクスが焦点になっている。自民党は当然ながら金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略の三本の矢をアベノミクスの成果として強調し、成長の好循環を実現してゆくと主張している。一方、民主党はこれに対して「景気回復は実感できない」という方向でアベノミクスを批判。政府の経済政策に対する副作用を強調し、賃金が上がらない中での物価上昇や金利上昇など多くの懸念があると主張している。
消費税引き下げに関しては、野党の多くは消費増税の凍結を訴えている。ただ筆者が街頭演説などを聞いている印象では、反対はあっても消費税引き上げの意義について正面から言及する政党は少ないようだ。過去の経験から選挙戦に増税の話を持ち出すのは不向きという感覚なのだろう。
こうした状況をみると、経済政策については政党間で議論すべき点が多々あるにもかかわらず、不十分なまま時間がすぎているという印象だ。15日からマレーシアで始まったTPPの交渉会合や社会保障問題、雇用問題など、生活に直結し、国民の関心も高い問題は多い。しかしこうした問題は忘れられているとまでは言わないが、あまり触れられず片隅に追いやられているような状況だ。