2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2013年7月16日

 ネット選挙の導入にあたり、日本では、誹謗中傷や「なりすまし」に対する懸念などから、電子メールの送信をまずは政党や候補者に限定する制限をかけてネット選挙運動の解禁を認めた。

 これに対し、お隣韓国では10年前から選挙でネットを活用する。2011年には憲法裁判所が「機会の均等や低コストというネットの特性はむしろ公職選挙法に合致する」との解釈を示して選挙運動上のネット利用規制を違憲と判断し、規制が完全に撤廃されている。

 メディアと選挙の関わりを専門とし、12年末に韓国で実施された大統領選挙においては、朴槿恵(パククネ)大統領と争い落選した文在寅(ムンジェイン)候補陣営から選挙戦を見た慶應義塾大学総合政策学部専任講師の李洪千(リホンチョン)氏に話を聞いた。

 「韓国では、選挙においてネットは日常的に使われるツールとなっており、政治側、有権者側ともにどう使いこなすのかに主眼がある」

 これまで選挙における争点や政策は、韓国においても、日本と同様に、政治の側から提起されるのが常であった。これが、ネットを使うことによって「政治に対して有権者の側から発信できるようになり、選挙において国民が参加する場面が増えた」(李氏)。有権者の選挙に対するモチベーションを上げるツールになっているというのだ。

有権者の選挙行動を高めるネット選挙

 たとえば、今回の選挙では、文氏がツイッターで政策を提案し、それに対するネットユーザーの有権者の声を集め、演説内容や政策に反映させたという。日本の選挙では考えられない光景だ。

 さらに、当初両陣営の間で争点になっていなかった原発政策を争点に入れるべきという声が有権者の間で上がり、ネット署名が一気に広がる場面もあった。

 韓国では、米国と同様に、選挙資金を自身の支持者からファンディング形式で募る。発信力の高い有権者がある候補者に対して支持を表明し、選挙資金も拠出するとネットで発信することにより、その候補者に対する関心をより強く引くことができ、有権者の選挙参加意識を高めることにつながっているという。「お金を出してまで支持するというのは、実際の投票以上に効果がある」(李氏)。

 一方で、それだけで自分の投票行動を決めていいのかどうか考えるきっかけにもなり、一般の有権者自身も“審美眼”が鍛えられる。


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