今月4日に公示された参議院選挙から、これまで規制されていたインターネットを利用した選挙活動が解禁された。しかし、なぜネット選挙が解禁されなければならないのかという本質的な議論は少ない。情報社会論と公共政策を専門とし、立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授を務める西田亮介氏が、その核心に迫った書が『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)だ。今回、西田氏に日本の公職選挙法の特徴、そしてネット選挙の本質について聞いた。
――いよいよ今回の参議院選挙からインターネットでの選挙運動が解禁されます。抜群のタイミングで出版されました。しかしながら、そもそもなぜネット選挙が解禁されたのかという議論があまりありません。
西田亮介氏(以下西田氏):本書は今回の参院選でのネット選挙解禁を見越し、直近の動きについては4月にフォローしながら実質今年の3月に約1カ月で執筆しました。
「なぜネット選挙なのか」という問が見当たらなかったことが執筆の動機です。もともと私は、本書の6章のようなソーシャルメディアを使う国会議員についての定量分析をしていました。そこでわかったことは国会議員のネット利用が歪だということです。
国会議員の議席は約722ありますが、データを収集した時点(2011年1月14日現在)でツイッターのアカウントを持っていたのは約3分の1にあたる214名でした。その214名が技術を使いこなしている先端的な議員であるかといえばそうではなく、大半はツイッターの技術特性をうまく生かしていなかった。なぜそうなってしまうのかといえば公職選挙法の縛りがあるためです。
――日本の公職選挙法は基本的に候補者の資金力の差が選挙運動に出ないよう公平になるようにつくられていると言われています。
西田氏:よく「日本の公職選挙法は時代遅れだ」、などと言われますが他国と比較すると一長一短で良い点も悪い点もあります。