つまり、ネット選挙解禁とは「均質な公平性」か「漸進的改良主義」かという価値観の選択であると言えます。
しかしながら、メディアはネットに限らず、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌とあるわけですが、ネットだけこんなに自由に使ってもいいのかという疑問は残ります。ですから、メディア全般について選挙での利活用をもっと考えたほうがいいのではないかと思いますが、そのような議論がないままにネットだけ自由な利活用が認められました。
――確かに他のメディアに関する議論は聞きません。ネット以外のメディアも含め、今後どのように利用されていくと予想されますか?
西田氏:世論の雰囲気としてはより自由な利活用を望んでいるようですから、ネット以外のメディアも今後一定程度自由になっていくのではないでしょうか。
また、今回の公職選挙法の改正が明らかに歪なものであるということは多くの関係者が気付いていますので、公職選挙法は引き続き改正されていくと思います。公職選挙法にも、努力義務として選挙の度に見直していく旨書かれてもいます。
――ネット選挙解禁により、若者投票率が上がるなど期待する声もあります。政治にどのような変化がもたらされると考えていますか?
西田氏:すぐに投票行動に影響することはないでしょう。しかし、ネット選挙解禁は、政治の透明化の第一歩になると思います。これまで政治家の発言は報道機関の番記者しか聞くことが出来ませんでした。しかし、ネットに政治家が発言した動画がアップされるようになると、多くの有権者の目に触れ、動画も残ります。たとえ削除したとしても削除したというログが残り、そうした事実も残ります。もちろん、彼らは最初口当たりの良いことしか言わないかもしれません。しかしまた彼らが口当たりの良いことしか言っていないことも指摘できるわけです。
一般有権者が投票に行かない理由は、政治で何が起きているかがよくわからないからです。有権者の投票が政治を変えるかどうかと思える感覚を「政治的有効性感覚」と言いますが、日本ではこの感覚が低いと言われています。この感覚が低いことが投票率の低い原因だと思います。そういったものをネット選挙解禁が中長期においては改善するキッカケになると思っています。ただ、それはネットを解禁すれば自動的になるものではなく、多くの既存のマスコミやジャーナリスト、研究者がチェックして初めてそのように機能するでしょう。ネットを皮切りに政治を透明化していこうというキッカケにしていかなければいけないと思いますね。