――自民党は安倍総理のフェイスブックが話題になっているように、ネットでの活動を重視しているように思います。自民党が6月26日開催した記者会見では2009年からソーシャルリスニング(ソーシャルメディア上の投稿データを取得し、ネット上の世論の傾向や反応を分析すること)を利用していると発表しましたが、これは予想していましたか?
西田氏:予想していました。民主党が与党だったとき、マニュフェストにネット選挙について書いていました。ただ、鳩山元首相が辞めたあとには引き継がれなかったのです。そして今回初めて与党の政策としてネット選挙が政策になった。なぜ自民党が強く望んだかといえば、これで勝てると踏んだからです。自民党はすでにネットの意見を分析し勝てるという根拠を掴んでいたからです。
――自民党のネット活用で中心的な役割を果たしているのは世耕弘成議員でしょうか?
西田氏:安倍―世耕ラインですね。世耕議員は大学院時代コミュニケーションを専攻し、企業ではPRを担当していました。2000年代前半から自民党内のコミュニケーション戦略チームを率いています。
――先の記者会見では、フェイスブックをもっと活用していくとも発言していました。
西田氏:フェイスブックというのはもともと持っていた関係性を強化する働きがあります。フェイスブックは、友達になっていたとしてもその中で優先度があり、たとえば私が更新したタイムラインがすべての友達に公平に反映されるとは限らないという特性があります。つまり、友達のプライオリティが低いと、いくら更新してもタイムラインにまったく表示されないのです。ですから、自民党が発信した情報にいいねを押すことでタイムラインに表示され、ますます関係性が強化されます。しかし、新規の有権者獲得には向いていません。
自民党はフェイスブックを強調していますが、実はもっと戦略を練っていて、ツールをいくつかにわけていると考えられます。つまり、新規の有権者獲得には、ツイッターや動画コンテンツ、もともとの支持者の信用を強固にするためにフェイスブック、というようにデザインしていると思われます。
昨年12月の衆院選で、自民党は投票日前日の最後の応援演説を秋葉原で行いました。どうして渋谷でも新宿でもなく、秋葉原なのでしょうか。それは、秋葉原はネットや技術好きな人が多く集まり、そこで選挙運動をすれば多くの写真や動画がネットにアップされると計算していたからでしょう。結果的に自民党が大勝しましたが、本当にネットが効果的だったのか、それとも民主党への反目から自民党に投票したのかは峻別することはできません。しかし少なくともネットが足を引っ張らずに自民党にとって追い風になっていることだけはわかった。そういった確信のもと、与党執行部直下でネット選挙を推進したと考えられます。
――出版後の反響はどうでしょうか?
西田氏:ありがたいことにさまざまな媒体で肯定的に捉えていただいているように感じます。
――どんな人に読んで欲しいですか?
西田氏:おそらく一般有権者向けのネット選挙の本はこれしかないはずです。そのなかでも若い人達に是非手に取ってもらいですね。なかなか敷居は高いですが政治に関心を持つきっかけにしてほしいと思います。
西田亮介(にしだ・りょうすけ)
1983年京都生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授(有期)。専門は情報社会論と公共政策学。情報と政治、ソーシャルビジネス、協働推進、地域産業振興などを主な研究テーマとする。現場とデータ双方の丹念な調査・分析に取り組み、得られた知見を以て現実に寄り添った問題提起を行う。
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