2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2013年7月16日

 それ以外にも、有権者が街で目にした候補者本人に関する様々な情報がインターネットを通じて次々に追加されていくことにより、テレビやラジオといったメディアでは伝えきれない候補者の素顔を知り、身近に感じることができる。

 選挙当日も、ツイッターで多くのフォロワーを持つ人が「予定を30分切り上げて、選挙に行ってみれば?」と促し、若者が選挙に参加する環境作りにも活かされているという。

 政治の側では、12年末の大統領選において、各陣営はネット対策専門のチームを編制して戦略を練った。

昨年の大統領選で支持者に囲まれる朴槿恵氏
(提供:AP/アフロ)

 朴陣営は自身のメインの支持層である50歳代以上の有権者に狙いを定めたネット選挙を展開。ツイッターやフェイスブックなどの、発信者にとって自分のメッセージの拡散が読み通せないツールはこの年齢層になじまないとして避け、互いに電話番号が分かる者同士無料でやり取りのできる「カカオトーク」をメインのツールとして採用し選挙戦を有利に進めた。選挙直前の時点でカカオトークに登録した「友達」の数は、朴陣営が約15万人の差をつけていたという。

 そうした韓国から日本の選挙に関する議論を見ると、どう映るのだろうか。李氏は、「公職選挙法は政治家を規制するものであって、有権者を縛るものではない。国民の意思に対し表現の自由を認めるべき」であるとし、日本の有権者自身に対しても、「電子メール禁止のように、現在の法案は有権者側にも規制をかけようとしている。これに対して『それはおかしい』と国民自身も声を上げるべき」と感じている。

 ネット選挙の議論において日本で懸念されている部分についてはどうだろうか。

 まず候補者に対する誹謗中傷については、「韓国の選挙管理委員会では、『サイバー選挙不正監視団』を設置して、候補者の要請に応じて、調査を行い不正な書き込みの削除を要請することもできる。候補者陣営においても、事実を示して反論することもでき、法律で規制するような話ではない」(李氏)。

 なりすましについても、「韓国ではなりすましによる選挙違反の逮捕者は非常に少なく、それが選挙において致命傷になることもない。心配すること自体に意味がない」(同)という。

 「日本におけるネット選挙の議論は、政治批判に対する懸念ばかりで、有権者の立場に立って、有権者がネットというスペースを使っていかに意見を発信できるかという視点が欠けている」(同)

WEDGE6月号特集『ガラパゴス過ぎる「ネット選挙」』
◎瑣末な議論に終始した日本のネット解禁論争
◎「規制」より「自由」で民主主義を体現する米国 海野素央(明治大学教授)
◎不可思議な規制だらけ 戦前からの公職選挙法

[特集] どうすれば良くなる?日本の政治

◆WEDGE2013年6月号より

 

 

 

 

 

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