「日中韓の協力呼び掛け」と「対日けん制」
中韓首脳が6月27日の会談後に発表した共同声明「地域と国際協力」の部分には「日中韓の協力呼び掛け」と「対日けん制」という相反する2項目が盛り込まれた。
協力呼び掛けは以下の通り。
「中韓日3カ国の協力は、各3カ国の発展と東北アジアの平和と共栄に、非常に重要な役割を持つ、との認識で双方は一致した。3カ国首脳会議を主とする協力メカニズムの安定と前向きな発展を推進すべきであり、今年の第6回3カ国首脳会議を成功裏に行うため、ともに努力することで合意した」
今年5月下旬にソウル開催で調整されていた日中韓3カ国首脳会議は、歴史や領有権問題で、日本と中韓両国の関係が悪化したため見送られた。上記の引用部分は、その3カ国首脳会議の年内開催を呼び掛けており、これは中韓の柔軟な態度の表明だ。
一方、対日けん制は以下の通り。
「現在のアジア地域の経済発展と相互依存度は不断に深まっているが、政治・安全保障の協力は相対的に滞り、特に最近は歴史及びそれに起因する問題について、地域の国家間の対立と相互不信が深まるという不安定な状況が存在し続けていることに憂慮を示し、地域内の信頼と協力を築くという共同目標の実現にともに力を尽くすことで双方は合意した。こうした背景下、中国側は朴槿恵大統領が提起した“北東アジア平和協力構想”を称賛し、原則的に支持する」
この部分は歴史問題に加え「それに起因する問題」として暗に尖閣諸島、竹島の領有権問題をめぐる日中、日韓対立が地域の不安定化を招いていると指弾。中韓が領有権問題を歴史と関連づけて問題化していることを明確にした。
関係改善の道筋は…
「安倍政権にとっても、参院選(7月21日投票)までに対中関係改善への道筋を付けることが得策だ。尖閣問題では日本側も少しは譲歩しないと落としどころは見つからないだろう。外務省は常に対中外交を重視している」。6月中旬に会った日本の元ベテラン外交官は、こう語った。
ちょうどそのころ、安倍政権の外交ブレーンを務める谷内正太郎内閣官房参与(元外務事務次官)が密かに訪中し、旧知の戴秉国・前国務委員(元外相)と会談していた。内容は明らかにされていないが、両国の関係改善について協議を行ったのは間違いない。