菅義偉官房長官は6月30日、都内で講演し、日中関係について「さまざまな折衝はしており、お互いの間合いは狭まってきている」と語っていた。こうした水面下の折衝があり、岸田外相はブルネイでも中韓との関係改善の可能性を探ったが、まだ、その道筋は見えてこない。
根深い歴史認識問題
4月に麻生太郎副総理ら一部の閣僚、多数の国会議員が靖国神社に参拝し、安倍首相が供物を奉納。安倍首相は同月の国会で、過去の植民地支配を侵略と認めた1995年の村山富市首相談話について「そのまま継承しているわけではない」などと発言し、中韓の反発を招いた。
ところが米政府が非公式に懸念を伝えてくると、安倍首相は5月に一転して村山談話継承を明言した。しかし、7月初めの党首討論会では、靖国参拝を正当化し、過去の植民地支配、侵略について「定義する立場にない」と自らの判断を拒否した。
韓国外務省は「安易な歴史認識に失望と深い遺憾」を表明するとのコメントを発表した。戦後の日本と中韓との関係は、過去の植民地支配や侵略への「反省とおわび」を基礎に発展してきた。
歴代政権が踏襲してきた村山首相談話、従軍慰安婦について旧日本軍の関与と強制性を認めた河野洋平官房長官談話(93年)に安倍首相がはっきりと立ち返らなければ、中韓両国と関係修復は難しいだろう。
米中の「協調」と「対立」
米国・西海岸の保養地で行われたオバマ米大統領と習主席による初の米中首脳会談は2日間で4回計8時間にも上った。ネクタイをはずし、リラックスしたムードの中で個人的な関係づくりをしたいというオバマ大統領の意向を習主席が受け入れた。
オバマ大統領の2期目4年間と、習主席の今後2期10年間という中長期的な米中関係のスタートを大切にしたいという双方の意向は完全に一致していた。
1949年の中国建国以来、米中関係は「対立」と「協調」の間を揺れ動いてきたし、現在のさまざまな議題も「協調」「対立」に分類できる。また、それぞれのテーマの内側にも「協調」と「対立」の要素が混在する
現在、主に「協調」に属するテーマは北朝鮮の核問題、新たな米中関係、緊密化する経済、グローバルな環境対策など、主に「対立」の色合いを帯びるテーマは軍事、海洋摩擦、サイバー戦争、中国の人権弾圧などだ。
今回の会談では、ありとあらゆる議題をとりあえず俎上に並べあげ、すべてについて、米中の考え方を点検した。こうしたやり方は、多面的で複雑な米中間の各テーマについて「協調」「対立」の要素を精査、優先度と難易度ごとに整理し、今後の協議をイメージするという点では大いにプラスになっただろう。