2024年12月4日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月5日

 米国の中には、「航行の自由」が確保されればよいとの狭い議論をしたり、海洋法秩序における同盟国の立場の維持への関与を避ける「ノン・コミッタル」な態度をとる者がいる。そのような姿勢をとっていれば、第二次大戦後米国が維持してきたこの海域における海洋の秩序は、中国の思い通りになってしまうだろう。米国の政策決定者たちは今こそ正しい判断を下さなければならない、と述べています。

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 論説は、最近の中国の海洋進出の仕方を正確に描いており、中国は、まず既成事実を創り出し、それを繰り返し常態化することによりマスコミが徐々に関心を弱め、報道しなくなることを狙っている、ということを指摘しています。筆者ホームズによれば、これは、まさに軍略家クラウゼビッツの戦略に適っています。最近の南シナ海、東シナ海の状況は、ホームズの指摘通りであり、中国としては、第1列島線内の海域において既成事実を積み重ねることによって、「内海」のような状況を創り出したいと考えているのは間違いないでしょう。

 南シナ海において、ASEAN諸国と中国の間でどのような行動基準が合意されるのか、日本にとっては決して対岸の火事ではありません。現在進行中の交渉を通じて、単なる政治的宣言ではなく、法的拘束力をもつ行動基準に合意できるかどうか、中国がそのような行動基準を受け入れるかどうかがカギとなるでしょう。

 米国が「航行の自由」を狭く解釈して、海洋法秩序全体に対し「ノン・コミッタル」な態度をとったり、あるいは、尖閣やスカボロー礁の領有権問題を「取るに足りぬ小さな島の問題」と見たりすることは、中国を利する危険な前例となりかねない、とのホームズの指摘は正鵠を射た警告です。尖閣に関する日本の立場を米国人などによりよく知らせる対外PRが必要な所以です。

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