特に、日米安保においては、これから数年間は米側の四年毎国防見直しと日本側の防衛大綱見直しがそれぞれ行われる際の戦略的関心事項のすり合わせ、日米防衛協力の指針の見直し、沖縄の米軍再編がどのように進むか、など懸案が目白押しだ。しかし、その中で、本来であれば国防省内で中核となって各軍や国務省との調整に当たるはずのアジア太平洋担当国防次官補のポストは、マーク・リパート前国防次官補がヘーゲル国防長官首席補佐官に就任したことで空席になって以降、実務レベルのピーター・ラボイ筆頭国防次官補代理が職務代行を続ける状態が続いており、後任が指名される気配はないのだという。
国務省ではカート・キャンベル氏の後任として外交官出身のダニエル・ラッセル氏が東アジア担当国務次官補に就任したが、クリントン前国務長官から全幅の信頼を得ていたキャンベル氏と異なり、NSCから移ってきたラッセル氏はケリー長官にしてみれば「外様」で、二人がこれからどのような関係を築くかは未知の部分が多い。
例えば、今年4月に日米間で沖縄の嘉手納飛行場以南の土地の返還に関して合意した際、返還予定地のリストに、きわめて大まかではあるが、これらの土地の返還予定時期が記載されていた。沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告書や防衛政策見直しイニシアチブ(DPRI)の際に出された日米安全保障協議会(2プラス2)共同声明の中での普天間飛行場移設の期限など、沖縄の米軍再編に関連した時期を明記することは、事後の変更を余儀なくされることが続いているため殆ど「タブー」に近いものがあったのだが、当時はまだ国防次官補の職にあったリパート氏が、本人の判断で根回し一切なしで返還時期のおおよその時期を記載することに決めたのだという。
国防省の組織の中では中堅幹部に過ぎなくても、オバマ大統領の外交スタッフとして、今でも一緒にバスケットボールをやるといわれているほど大統領と近いといわれる同氏の政治力は大きく、その政治力があったからこそ出来た決断であるといわれている。
米側と事務レベルでの緊密な協議の維持を
つまり、これから日米安保に関する協議の中で、難しい局面を迎えれば迎えるほど、そのような一定の政治力を持つ中堅幹部の人間の存在がアメリカ政府内部で必要になるのだ。当面、そのような政治力を持つ幹部の出現がとりあえず期待できない以上、日本にとっては、米側と事務レベルでの緊密な協議を維持することが何よりも重要になってくるだろう。
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