この数試合の日本代表は、ディフェンスにおいて、相手の動き、味方のポジション取りを予測できず、突破されるケースが目立った。
では予測力とは何なのか。鹿屋体育大学の前田明教授、大学院生の山崎大嗣さんの興味深い研究がある。
大学サッカー選手を対象に、プレー予測の優れた選手とそうでない選手を比較し、優れた選手は、プレーのどこを観ているかというものである。攻撃3人 (図2上の白ユニフォーム、FWは背番号9)、ディフェンス2人のプレー映像を見せ、(1)FWへのパス(2)(FW以外のオフェンス側の)味方へのパス(3)ドリブル(4)ディフェンスに奪われるかの4つの選択肢から、次に何が起こるか、0.1秒前に映像を止めて、予測させる実験である。この際、映像を止める前の1秒間(30コマ)をコマ送りして、どこを見ていたかを専用の装置で記録した。
このうち「FWへのパス」「オフェンス側のパス」の場合、両者に映像を止める1秒前~0.33秒までには違いが見られなかったが、0.33秒からは、予測の優れた選手はFWと攻撃側の選手の間(図2下のピンク色)を幅広く注視していた。パスコースを見ていたことがわかる。一方、予測力の劣る選手は、ディフェンス(図2下の赤)を見続けていた。
前田教授は「予測力の高い選手は、周辺視野を使いディフェンスを見ながら、その先のパス先であるFWとオフェンスの間に中心視野を先導させる。そしてパスできるかどうかを一瞬に判断する。そのため、正解率が高かったと見られる」と語る。周辺視野と中心視野を短時間に使い分けることが予測力向上につながることを意味してくる。
大事なのは予測の共有 イメージ力
こうした深視力、予測力を個が高めることは重要だ。そのためには、室内でスライドや映像を使ってのトレーニングも有効と言われる。まずは、個のスキルアップということであるが、真下さんは「スポーツビジョンは、世界のトップクラスになれば、極めて高い。大事なのは、チームとして、(スポーツビジョンで得た情報収集、予測などについて)同じイメージを持つことだ。次にどこにパスされるか、スペースができるかをチームで考えることだ」と強調する。
それには「練習を通して全員が同じイメージを持つ時間が重要。そうすればチームとして素晴らしい攻めや守りが出来る。イメージ力に個人的バラツキやチームとしてのまとまりがないと、考えや発想がちぐはぐとなり、目も当てられない結果になる。チーム全体で対処が出来ない場合は、それこそ個人の能力、決断力がものを言うが、本田選手の言う「個」には、統一のとれたイメージ力の向上ということが含まれている」と指摘する。