2024年4月20日(土)

科学で斬るスポーツ

2013年5月21日

 今年、大リーグの日本人投手の活躍がめざましい。5月19日現在、アメリカン・リーグのダルビッシュ・有(テキサス・レンジャーズ)が7勝1敗、黒田博樹(ニューヨーク・ヤンキース)は6勝2敗、岩隈久志(シアトル・マリナーズ)は5勝1敗と、それぞれ先発の柱として、監督、チームの信頼を勝ち取っている。特に目立つのは岩隈の巧みな投球術。スライダー、フォークボールのコントロールが良く、その好調ぶりはリーグ3位の防御率1.84(昨年3.16)にも現れている。

 黒田も防御率1.99とリーグ4位に躍り出て、ダルビッシュも防御率は2.97と昨年の3.90を上回る。何しろ奪三振が86個と、断トツのリーグトップを走る好調ぶりだ。

大リーグで成功するカギは“適応力”

 岩隈、ダルビッシュともに2年目。好調の最大の要因は、自らの投球フォームを大リーグの固い粘土状のマウンドにあったものに修正し、本来のコントロールを取り戻したことが大きい。

 実は、松坂大輔(現クリーブランド・インディアンズ)も2年目までは順当に勝ち星を重ねたが、その後、多くの故障に泣き、最終的には肘再建手術を受けた。

 では、松坂がなぜ3年目以降、うまく適応できなかったのか。

 元広島カープのトレーナーで、投手の動作解析などを行うフェアプレイ・データの石橋秀幸社長(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員)は、「大リーグのマウンドに十分に適応できず、肘など体に負担がかかる投げ方だった」と指摘する

 石橋さんは、大リーグに移籍した2007年の松坂がボールをリリースする瞬間のフォームを、三塁側から見た時の動作を解析した。この時の特徴は、右膝、腰、股関節、左膝、足首を結んだ線がM字になっていることだ。(下図の左)

三塁側から見た、松坂投手のボールをリリースする瞬間の動作解析 左は大リーグ移籍した2007年、右はフォームを修正した2008年 (石橋秀幸氏提供) 左は大きなステップと重心の低さが特徴。右はステップ を狭め、重心が高い。体への負担が少ない。
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 このM字は、股関節が、左膝より下にある。ジャンプするほどの大きなステップで、軸足の膝が地面につくくらい重心を低くし、体が大きく前方に移動している。


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