今年、大リーグの日本人投手の活躍がめざましい。5月19日現在、アメリカン・リーグのダルビッシュ・有(テキサス・レンジャーズ)が7勝1敗、黒田博樹(ニューヨーク・ヤンキース)は6勝2敗、岩隈久志(シアトル・マリナーズ)は5勝1敗と、それぞれ先発の柱として、監督、チームの信頼を勝ち取っている。特に目立つのは岩隈の巧みな投球術。スライダー、フォークボールのコントロールが良く、その好調ぶりはリーグ3位の防御率1.84(昨年3.16)にも現れている。
黒田も防御率1.99とリーグ4位に躍り出て、ダルビッシュも防御率は2.97と昨年の3.90を上回る。何しろ奪三振が86個と、断トツのリーグトップを走る好調ぶりだ。
大リーグで成功するカギは“適応力”
岩隈、ダルビッシュともに2年目。好調の最大の要因は、自らの投球フォームを大リーグの固い粘土状のマウンドにあったものに修正し、本来のコントロールを取り戻したことが大きい。
実は、松坂大輔(現クリーブランド・インディアンズ)も2年目までは順当に勝ち星を重ねたが、その後、多くの故障に泣き、最終的には肘再建手術を受けた。
では、松坂がなぜ3年目以降、うまく適応できなかったのか。
元広島カープのトレーナーで、投手の動作解析などを行うフェアプレイ・データの石橋秀幸社長(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員)は、「大リーグのマウンドに十分に適応できず、肘など体に負担がかかる投げ方だった」と指摘する
石橋さんは、大リーグに移籍した2007年の松坂がボールをリリースする瞬間のフォームを、三塁側から見た時の動作を解析した。この時の特徴は、右膝、腰、股関節、左膝、足首を結んだ線がM字になっていることだ。(下図の左)
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このM字は、股関節が、左膝より下にある。ジャンプするほどの大きなステップで、軸足の膝が地面につくくらい重心を低くし、体が大きく前方に移動している。