科学で斬るスポーツ

2013年5月21日

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 日本では、上半身だけの手投げは悪く、下半身をうまく使った重心の低い、粘りのある良いフォームとされる。球が手元で伸びるとされ、実際、そう指導する監督、コーチがほとんどだ。肘が前方に出されるなど可動域(動かせる範囲)が広くなる。肘を支点に回転速度が速くなるなど、その結果として150キロを超えるスピードボールが投げられる。

 しかし、このM字フォームの欠点は、踏み込んだ足、肘に大きな負担がかかってしまうことにある。踏み込み足が動く、日本のマウンドで慣れきった選手には、大リーグの固いマウンドは、コントロールがつけにくい。無理な体勢で投げ続けることで、けがにつながってしまう。「実際、松坂はそこでけがをした」と指摘する。

 松坂は、1年目の経験から、翌2008年にはフォームを修正した(1ページ図の右)。M字は、少し解消され四角形になっている。踏み込んだ足までのステップ幅が、明らかに狭くなり、重心は高くなっている。

 しかし、体に染みついたフォームを変えることは簡単ではない。コントロールをつける微妙な感覚、筋肉の使い方、脳内のイメージなど変えるべきことが多いからである。

 結果的に、足に無理がいき、バランスを失った状態で、肩、肘を酷使した。その結果、肘の故障、再建手術につながってしまったということなのである。何とも残念である。松坂がフォームを今後、どう修正するか。少し時間がかかるが、修正が成功する可能性はゼロではないだけに、注目したい。

 松坂に似た選手には、川上憲伸(元アトランタ・ブレーブス、 現中日)がいる。川上も日本で結果を残したが、適応するには時間が足りなかったということだろう。

変化球投手・ダルビッシュは大リーグに合っている

 では、岩隈やダルビッシュが適応できたのはどこにあるのか。

 そのカギは、松坂と異なり、もともと変化球投手で、比較的重心が高い投げ方であったことがある。

 そして大リーグでは、明らかに、ステップ幅を狭め、日本時代より重心が高くなるように修正している。

 その上で、踏み込んだ足を少し開き気味に着地させる。やわらかい砂や土の日本のマウンドでは着地した足が動くので、「内また」気味の着地だったが、粘土のように動きにくい大リーグでは、開き気味にすることで、足への負担が少なく、遊び(余裕)が生まれる。この余裕がコントロールにつながっている。

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