2024年11月22日(金)

安保激変

2013年10月9日

 連邦政府閉鎖から1週間。ワシントンでは事態打開に向けたシナリオはまだ描けていない。それどころか、オバマ大統領は、特に米国の債務限度額引き上げについては「議会共和党との交渉はしない」と言い切り、何の手も打っていないように見える。連邦政府閉鎖の前日の9月30日に公表されたワシントン・ポスト紙とABCニュースによる共同世論調査では、政府予算をめぐるこれまでの動きの中でのオバマ大統領の対応を「評価しない」とする人が全体の50%で、「評価する」の41%を上回ったが、これは、オバマ大統領にもっと指導力を発揮してほしいと考える層が潜在的に大きいことのあらわれといえる。

 国内でこのような米国の国家経済の根底を揺るがしかねない事態が起こっていることを踏まえ、オバマ大統領は10月の6~12日に予定していた東南アジア歴訪を中止せざるを得なくなった。本来であれば、オバマ大統領はバリ島でのAPEC首脳会議とブルネイでの東アジアサミットに出席した後、マレーシアとフィリピンを歴訪する予定だった。マレーシアとフィリピンへの訪問は10月2日に取り消しつつ、APEC首脳会議と東アジアサミット出席には最後までこだわったのだが、こちらも結局10月3日に出席を断念した。

オバマ大統領、急速な求心力の低下への懸念

 米国大統領が国内事情への対応を優先させて外遊を取りやめること自体はこれが初めてではない。アジアとの関係で言えば、クリントン大統領も、前述の1995年11月から翌年1月にかけての連邦政府閉鎖との関係で、当時、出席を予定していた大阪でのAPEC首脳会議出席を中止している。

 しかし、問題は、現在の膠着状態が打開できる見込みが非常に低いこと、また、今回の事態を切り抜けることができても、オバマ大統領にとって、議会では、上院は民主党多数、下院は共和党多数の「ねじれ」が続く現状は当面、変わらない現実である。つまり、何とか今回の緊張状態を脱することができたとしても、国内で意見が分かれる問題について議会と合意に達することが極めて困難な状態がオバマ政権にとって続くということだ。

 しかも、来年の中間選挙で民主党が下院で過半数を占めることができなければ(現在の米国では、民主、共和にかかわらず『アンチ現職』の空気が支配的で、これが中間選挙にいかなる作用を及ぼすのかが全く読めない)「ねじれ」議会がオバマ大統領の残りの任期の期間、ずっと続くことになる。要は、オバマ政権が早ければ来年秋にもレイム・ダック(死に体)化してしまう可能性があるのだ。


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