2024年7月15日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年1月12日

 2023年12月11日付ワシントン・ポスト紙は、「南シナ海での中比緊張:2023年の5つの出来事」とのRegine Cabato同紙リポーターの解説記事を掲載し、南シナ海を巡る中国とフィリピンとの間の緊張激化を説明している。

(SpicyTruffel/Racide/gettyimages)

 2023年、南シナ海では中比間でさまざまな事件が発生した。以下は、2023年の5つの事件である。

(1)2月に中国は、レーザーをセカンド・トーマス礁近くのフィリピン沿岸警備隊船舶に照射した。これは、マルコス大統領の訪中1カ月後に起きた。これがフィリピンの政策変化をもたらした。

 大統領は中国大使を直接召致した。フィリピンは、事件現場の映像を公表することを決定し、2月以降フィリピンは中国の行動を積極的に文書化し発表し支持を得てきた。

(2)3月、40隻以上の中国海洋民兵船で民間人が居住するティトゥ島周辺に集結した。12月には、フィリピン沿岸警備隊は135隻の中国船がウイットサン礁に押し寄せている映像を公表した。

(3)8月、領有権主張のためにセカンド・トーマス礁に置かれた沈没船シエラ・マドレに駐留するフィリピン海兵隊員に補給していた船舶に対して、中国は放水銃を使った。フィリピン外務省は、大統領が訪中で合意した緊急ホットラインで連絡したが、中国は6時間無視した。

(4)9月、フィリピンは、イロコイ礁への被害映像を公表し、中国民兵船の行為だと主張した。仲裁裁判で環境被害補償を中国に求めるべしとの法務大臣の主張は現在政府部内で検討中である。

(5)12月、フィリピンはスカボロ礁近くの漁民への物資配給と、セカンド・トーマス礁前哨地への補給の2つのミッションを係争地に派遣した。中国は物資配給ミッションに8回、補給ミッションに4回、放水銃を使用した。

 フィリピン船舶1隻は放水銃でエンジンを損傷し曳航されて帰還した。もう1隻はマストを損傷し、他1隻は体当たりされた。中国の海警船と海洋民兵船計13隻から嫌がらせされたとされる。妨害行為拡大を受け、フィリピン政府は国家戦略の調整を検討中だと言う。

*   *   *

 改めて2023年の中比間の各種事件を見ると、南シナ海における緊張が良く分かる。しかし、ここには触れられていない他の重要な動きも踏まえれば、フィリピンに圧力をかけるという中国の戦法は、必ずしも成功していないように思える。

 まず、1月のマルコス大統領の訪中、2月のレーザー照射後の4月には、フィリピンは米国と、米国が使用できるフィリピン国内の基地を5カ所から9カ所に増やすことに合意した。この記事も指摘しているように、訪中直後の2月にレーザー照射が起こったことに対して、マルコス大統領は「面子をつぶされた」と思ったのだろう。その後、秦剛前外相が訪比しているが後の祭りだった。


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